感情美人への道Vol.11~イルカが打ち上げられると不安になる理由〜

「イルカが打ち上げられる」という現象は確かにショッキングですが、あまりその「現象」そのものにフォーカスをすると、本質を見失うかもしれません……

Why does seeing dolphins drifted on the shore freak out people?

茨城県で4/10にイルカが約150頭打ち上げられ、それに伴い大地震が来るのではないか!
と先日ネットを中心に一騒動ありました。

このニュースを機に、改めて防災意識を持つのはとても良い事です。
一方で、情報を追って行くと一部の人はパニック状態になっていて、ちょっと行き過ぎかなと思う面もあります。

今回は、「イルカが打ち上げられるとなぜそんなに怖くなってしまうのか」
心理学的に説明しましょう。

まず、私達は「普通と違う事」「異常な事」に注意を向けるようプログラミングされていますから、

 ・イルカが大量に浜に打ち上げられる

 ・ 「地震」というワード

だけで、今回の茨城県の件はすごく強烈なインパクトになっています。
更に、恐怖を伴った時、思考は次のように動きがちです。

ありそうもない出来事が起きる確率を過大評価する
その評価に対して、過大な重み(事実を超えた意味)をつける

加えて、そのストーリーにリアリティが加わると、
更にこの思い込み(恐怖)は強くなります。

例えば……

 ・ 東日本大震災の前も、イルカが大量に打ち上げられた

 ・ 有名な予言者が地震が来ると預言していた日と重なる など。

このようなエピソードは、自分が持って行こうとする結論をサポートする事例が選択されていきます。

ですので、

イルカが打ち上げられても地震が来なかったケースもある
群れの一部が間違って浜に向かうと、群れ全体も浜に向かってしまう

等の情報は、余り「重さ」が置かれなくなってしまうのです。加えて私達は「経験に基づく意味」を重用視します。東日本大震災の記憶は、私も含めて多くの人の中に生々しく残っています。その恐怖が呼び起こされて、最大限のアラートが鳴る訳です。

動物達が、人間には分からない何かを感じる力はきっとあるんだと思います。
日本にいれば、いつどこで地震がおかしくないし、それは明日かもしれないし1年後かもしれません。ニュースを機に、防災意識を持つのはとても大切です。

ただ、今回のような噂に必要以上に気を取られて買いだめに走ったりですとか、そういう風になってしまうとちょっと違うかな、と。

地震って来る時はあっという間に来るんですよ。備えていたものだって、1つも手に取れない場合もあります。私も東日本大震災で、被災しました。
生死を分けるものって、紙より薄いんですよ。
だから、「イルカが打ち上がって、怖い!」っていう事にフォーカスするんじゃなくて、いつ何があっても後悔のないように毎日生きるのが一番大切なんじゃないかな、と思います。

(参考文献 : 『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン著 ハヤカワ文庫)