中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」part.54〜残虐な殺人鬼の霊と交信できる霊能者は何処に

歴史的にも残虐と言われた人物の霊にインタビューしてみたいうさぎさん。また、人類を見守るメンター的存在の宇宙人や霊がいるとすれば、その人類が起こしてしまった凄惨な出来事に対する彼らの捉え方も訊いてみたくなります。

ナチス関連のドキュメンタリーを観るのが好きだ。

アウシュビッツの目を覆うような記録映像とか歴史に残るアイヒマンの裁判映像とか、ナチスを父に持った人々や収容所の生き残りの人々のインタビュー、今なおナチスの残党たちを追い続ける人々の話などなど、フィクションで語られるホロコーストよりも生々しい現実が心に刺さる。

このような凄惨な記録で何度も繰り返されるのが「何故、人間にこんな残虐なことができたのか?」という問いであるが、私は「人間だからできたんだろ」と思う。

我々人間には間違いなく、そのような残虐行為に快感を覚える性質や、自分とは違う価値観や世界観を持つ他者を差別し憎む心性が備わっている。

ヒットラーとその一党は怪物だったわけでもないし、気が狂っていたわけでもない。
我々とほとんど変わらない人間だったのだ。

(アドルフ・ヒトラー/写真提供ウィキペディア)

死者の霊を降ろしてその言葉を伝える霊能者が本当にいるのなら、ヒットラーやナチス幹部の霊にインタビューしたいと願うジャーナリストや学者は世界中にいるだろう。
だが、そのようなことをした人はひとりもいない。

ジャーナリストや学者がスピリチュアルを信じないからだろうか?
ならば、スピリチュアルを信じる人々がそれをやればいい。
降霊を信じるスピリチュアリストは少なからずいるだろうに、彼らは自分の身内だの先祖だのの降霊にしか関心がないのだろうか。

世界を震撼させた大事件の当事者や歴史の目撃者の証言を、その耳で聞きたいとは思わないのか? 

 

一部のスピリチュアリストたちは、しばしば壮大な宇宙観を語る。

何億光年も離れた星系に人類を見守るメンター的存在の宇宙人(あるいは霊)が存在し、選ばれた霊能者にメッセージを送ってくる、というものだ。

それはそれで話として面白いものの、私が訊きたいと思うのは、そういった霊たちがホロコーストや宗教戦争や革命などをどう考えているのか、である。

何千年も前から人類を見守っていると言うのなら、当然、そこで行われたことをつぶさに目撃したに違いない。
なのに彼らは非常に個人的な事柄に関するメッセージしか送って来ないように思われる。

私の未来がどうなるとか、私の過去がどうだとか、そんなことはどうでもいい。
私は自分の未来など知りたいとも思わないし、知ったところで世界が変わるとも思わない。

それよりも世界を変えてしまうような事柄に関する彼ら(彼女ら)の証言や見解を知りたい。
「人間とは何なのか」という問いがそこに潜んでいるからだ。
人類のメンターなのであれば、伝えるべきメッセージはそこではないのか。

このコラムを読んでいらっしゃる方の中で、ヒットラーやキリストや連続殺人鬼の霊と交信できる霊能者をご存知の方がいらしたら、ぜひ紹介して欲しいのです。


私は彼らの言葉を聞きたい。
本当に、心の底から聞きたいのだ。

どうか、よろしくお願いします。

 

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