中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.34 〜『安住の地』新居探しの旅はまだまだ続く〜

家賃だって滞納したことはない。税金もしぶしぶだけれども払っている。もちろん前科もない。そういう意味では社会人として信用されてもいいはずなのに…と振り返る中村うさぎさん。『安住の地』探しの過程で、なんとも自分のプライベート赤裸々暴露ライフを呪うような事態が待っていました。

さて。
「ボロは着てても心は錦」と言い聞かせつつ、藁にもすがる気持ちで初台のボロマンションに入居申込みをした中村であったが、二日後に不動産屋から連絡があって、

「中村様、申し訳ございません。保証会社の審査は通ったのですが、大家さんの審査に落ちてしまって……ご入居できなくなってしまいました」

が――――――――ん!!!!
携帯電話を耳に当てたまま、思わずヨロめいた私である。
なんと! あんなボロマンションから入居を断られるとは!

「もしもし、中村様?」
「あ、はい。聞いてます」
「本当に申し訳ございません。私の力不足で」
「いえ、あの……大家さんに断られた理由は何ですか?」
「ああ、それがですね、正直に申し上げますが、じつは大家さん、中村様のご職業とペンネームを知って、お子さまとお孫様を招集して家族会議を開かれたそうなんです。中村うさぎさんを入居させるべきかどうか」
「はぁ? 家族会議~っ?」

なんじゃ、そりゃ!
そんなことでわざわざ開くか、家族会議?
私って、世間ではそこまで問題児扱いなのっ?

「それで、家族会議で否決された、と?」
「そうなんです。大家さんご自身は入居OKだったみたいなんですが、娘さんがネットで中村様を検索したところ……えーと、あの……お部屋を大変散らかしてらっしゃる映像をYouTubeでご覧になってですね……こんな汚い使い方をする人には断固貸したくないと大反対されたそうで……」
「!!!!!!!」

ああー! あのYouTubeか―――っ!!!

あれは確か、10年くらい前にテレビ番組で流れた映像。
私が家中にシャネルやらディオールやらの高級ブランド服を着散らかして、足の踏み場もない様子を、カメラに収めたヤツである。
じつは企画段階では、潔癖症の稲垣吾郎(元SMAP)が私の家を片付けるという予定だったのだが、実際に家にやって来た稲垣吾郎があまりの汚さに呆れ返り、玄関から上がるのを拒否したという伝説の汚部屋だ!

うーむ、今まで自分の汚部屋を散々ネタにしてきた私だが、まさかそれを理由に入居を断られるとは!
自業自得とはいえ、切なすぎる―――っ!!!

諸君、私はこの時ほど自分のプライベート赤裸々暴露ライフを呪ったことはない。

べつに汚部屋だろうがバカ女であろうが、誰にも迷惑かけてないからいいじゃん、と思っていた。
家賃だって滞納したことないし、税金もしぶしぶ払ってるし、もちろん前科もないし、そういう意味では社会人として信用されてもいいと思っていたのだ。
しかし、世間というものは、汚部屋に住んでるような女を許さないのである。

「まぁ、仕方ないよ」
友人たちにこの話をすると、みんな、薄ら笑いを浮かべて、こう言うのだった。
「あの部屋見たら、誰だって貸したくないよ。だってゴキブリいそうだもん」
「何よ! 散らかしてるのは服だけよ! 生ゴミはちゃんと捨ててるもん!」
「いやいや。あの部屋見たら、服の下に腐ったピザの食い残しとかありそうって思うよ」
「ねぇよ、そんなもん!」
「うっそー! だって、以前、部屋に小蝿が繁殖してたことあるじゃん」
「うっ……あれはたまたま……」


(写真の部屋はあくまで誇張したイメージです)

ねぇ、信じて! ホントなの!
私、こう見えて、生ゴミだけはちゃんと捨ててるのよ!

一度うっかり捨て忘れて小蝿が湧いたことあるけど、それ以来、ますます生ゴミには神経質になったんだから――っ!
何故なら、私は虫が大嫌いなんだもーん!!!

しかし、そんなこと言っても、誰も信じてはくれないのだ。
汚部屋女は生ゴミも溜め込んでるに違いない、蝿やゴキブリも湧き放題だ、と思われても仕方ないのである。

ああ、諸君、またしても中村は新居探しの旅に出るのであった。
次回こそは、絶対に見つけてやるわ、私の約束の地を!

 

中村うさぎさん公式サイト
http://nakamurausagi.com/

メールマガジン
http://www.mag2.com/m/0001629430.html

Twitter
https://twitter.com/nakamura_usagi

Facebook
https://www.facebook.com/nakamurausagi

中村うさぎvsマッド髙梨 ガチBLOG!
http://takanashi.livedoor.biz/

《中村うさぎさんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/nakamurausagi/?c=56547