中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.23 〜TRINITY編集長、遠藤との対談①人工知能について〜

無事退院された中村うさぎさん。私、遠藤と2時間半も語り合ってくださいました。話題も多岐にわたり、まずは人工知能から。人間は何のために生きるのか、そして人工知能は心を持てるのか等々……。ある意味、非常にスピリチュアルな内容に話は展開していくことに。
中村うさぎ

さて、前回は急な入院のご報告でしたが、今は無事退院してすっかり元気になった中村です。
病気が治ったわけではなく、あくまで薬で症状を抑えているだけなんですが、身体が強張ったり激痛が走ったりすることがなくなったので、めっちゃラク!

要するに人間はどこかが痛かったり苦しかったりしなければ、たとえ病気を患っていても本人の自覚的には「元気」なんだなと、しみじみ思っている次第です。

「元気=健康」じゃないんですね。

そして私は、とりあえず元気ならいいか、という心境です。
この病気は治らないかもしれないけど、それはもう仕方ないし、べつにいいや。
どうせいつかは死ぬんだし、「生」とは「死までの猶予期間」に過ぎない。
なら、この猶予期間をいかに味わうか、という事が大事に思えてきたのです。

健康じゃなくても元気であれば、いろんな人にも会えるし、何でもできる。
まだまだ知りたい事や考えたい事はたくさんあるから、生きる時間はそれに使おう、と。

そんなわけで今回は、皆様もご存知、このTRINITYの編集長である遠藤明美さんと対談しました。
遠藤さんは私がまったくスピリチュアルを信じてないのを知りつつも、こうしてWEBマガジンにエッセイを書かせてくださってる奇特な人です。

それだけ懐が深いというか、視野が広くて、自分とは違う世界観で生きている人の言葉にも耳を傾け関心を寄せる人。
こういう人って、本当に精神的に自由なんだなと思います。
で、今回、2時間半ほど、遠藤さんといろんな話題で話し合いました。

 

まず最初の話題は「人工知能」。

人工知能が今や人間をしのぐほどの能力を持っているのは周知の事実ですが、そうなるとこの社会はどう変わっていくのか。

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「なんでも、人間は一日5時間だけ働けば済むようになるそうなんですよ」
「へぇ、いいですね」

怠け者の私が思わずそう答えると、遠藤さんは驚いた様子で、
「え、うさぎさんはそれでいいんですか? 私は嫌だなぁと思ったんですけど」
「働かなくても生活できるなら、働きたくないですねぇ」
「でも、働くって、べつに生活のためだけじゃないですよね。たとえば人間には『成長したい』って欲求があるじゃないですか」

これはいかにも遠藤さんらしい発言だなぁ、と、私は心の中で感心した。
遠藤さんは仕事をとおして見聞を広め、知識を蓄えて成長することが、人生の重要事項なのだ。
さまざまなものに興味を持つのも、彼女のこういう気質であろう。

まぁ、それは私にもわかる。
私もまた、いろんな知識を得て自分が成長することに快感を覚えるからだ。

だから私は人と対談するのが大好きだ。
原稿書くのが嫌いなので、できれば対談本だけで食っていきたいくらいだ、マジで。

「うさぎさんは働かなくても平気ですか?」
「うん、生活のための労働は少ない方がいいな。あとは好きな事してていいんなら、それに越した事はないです」
「でも、成長したいという欲求はあるでしょう?」
「ありますけど、それは労働以外の時間で満たされるわけじゃないですか。本を読んだり映画を観たり人と会って話したり……刺激はそこでいくらでも受けられるでしょ」
「確かにそうですけど、それだけで人間は本当に満たされるのかな、と」
「うーん……たぶん、それだけじゃ自分が社会に参画してるという実感がないでしょうから、そこに満たされない感じが残るでしょうね」
「ああ、そうですね。それです」
「プライベートで知的好奇心は満たせても、それは自己完結的な生き方だから。社会と自分が繋がってるという感覚がないもんね。ニートなんかもそういう問題ですよね。働かない事が問題なのではなく、むしろ彼らには社会に居場所がないという問題」

人間は何のために生きているのか、という問いかけへの、これはひとつの答だ。人間には「自己実現」の欲求がある。

遠藤さんの言う「成長」とは、この「自己実現」を指している。
ただ、その「自己実現」には「社会からの認知」も必要となってくるわけだ。

遠藤さんは仕事をとおして自己実現をする事で、同時に社会からの認知も満たすタイプ。

だが現代はネットというヴァーチャルな「社会」があるので、そこで認知欲求が満たされてしまう人も多い。

人工知能が発達した世界では、おそらくネット社会のみで生きていく人々が増えるだろう。
彼らは家から一歩も出ず、リアルで人に会ったり話をしたりすることもなく、むしろ生身の人間とは接触を避けるようにすらなるかもしれない。
ネットで喧嘩をしても無傷でいられるが、生身の人間と衝突すると苦痛を伴うからだ。

こうしてリアルから遁走して生きる人々にとって、生身の人間はリアリティを失い、単なる「書き割り」に過ぎなくなっていく。
私が恐ろしいと思うのは、その点だ。

ならば、嫌でもリアルの人間と接触しなくてはならない「一日5時間の労働」は、彼らがリアリティを取り戻すためのリハビリになるとも考えられる。

遠藤さんとの話は、この後、「人工知能は心を持つか」という話に展開していく。

ある意味、非常にスピリチュアルなテーマだ。
ご期待ください。

 

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