執着を脱却することで苦しみから解放される諸行無常の世界観

「世の中は、何が起こっても不思議ではない」というのが仏教の世界観です。 現在の安定した生活が永遠のものではないと考えることにより、何が起こっても心の準備が整って、大きな心のダメージを負わなくて済むということになるという考え方です。

こんにちは、心理士の村田です。
「人生は苦しいことばかり」この考え方を仏教では「一切皆苦」といいます。
今回は、この苦しみから解放される諸行無常の世界観を心理士の立場から紹介いたします。

 

諸行無常の世界観

まず、諸行無常の意味について検討しましょう。
次の文は、ご存知平家物語の冒頭の一節です。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

祇園精舎というのはブッダが修行した寺院の名称です。
諸行とは森羅万象すべてのことを表します。
そして、無常とは「つねならず」であり、常に変化していることを表します。

つまり、すべての事物は移り変わるものだということを意味しています。ブッダが悟りをひらいた沙羅双樹の花も散り、隆盛を誇る人も必ず滅びる。風の前の塵と同じで吹き飛ばされてしまうという例えです。

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「いろはにほへと」の世界観

次に「いろはにほへと」の世界観について考えてみましょう。「いろはにほへと」は、本来、次のような文面です。

「色は匂えど散りぬるを我が世誰ぞ常ならむ有為の奥山今日超えて浅き夢見し酔いもせず」

色とは森羅万象の全てを表します。
つまり、「全てのものは、実態はあるが、散ってなくなるものです。
誰もが我が世が永遠に続くと考えますが、有りや無しやという執着を超えて、酔もせずに浅い夢を見ている(ようなものが悟りの世界です)。」

このように「いろはにほへと」は悟りの境地を表したものでもあるのです。

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最新科学に通じる仏教の世界観

以上のとおり、「全ては移り変わるものである」というのが仏教の世界観ですが、科学的に正しいのかを検証してみましょう。
太古の昔、隆盛を誇った恐竜も永遠に栄えることはなく滅亡しました。

不動の象徴である山といえども造山運動で一箇所に留まってはいません(大陸移動説)。
大宇宙でさえビッグバンから始まり膨張し続けており、太陽はあと50億年もすれば、どんどん大きくなり、地球を飲み込み、最終的には大爆発します。
数億年もすれば、日本も大陸移動で大きな大陸に飲み込まれてしまいます。
それよりも近い将来の100万年後、人間自体存在しなくなります。
増してや、人間の命や栄枯盛衰など瞬間の出来事です。
仏教の世界観は、上記のような宇宙的な動きさえも言い当てています。

仏教では、執着することを「愛」という言葉を使い、執着することを否定しています。
人間の寿命には限りがあることは誰でも知っていることですが、突然の不幸などはなかなか受け入れることができずません。

これが執着です。
仏教では、執着せずに現実を見るように諭します。

同様に、現実をしっかり見つめて受け入れること促す心理療法に認知療法があります。
自分の心理状態を書き出すことで、自分の考え方の歪みに気づくという技法です。

このように、心理学と仏教には「正しく見るという点に」共通性が見られます。

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苦しみから解放される仏教の世界観

「世の中は、何が起こっても不思議ではない」というのが仏教の世界観です。
現在の安定した生活が永遠のものではないと考えることにより、何が起こっても心の準備が整って、大きな心のダメージを負わなくて済むということになるという考え方です。

このように解説すると、仏教は「負けてもともと」というネガティブな宗教と考え勝ちですが、上記のように、過去の出来事について執着しないという極めて前向きな宗教です。

いかがでしょうか? 最新科学の考え方と仏教の世界観との共通性をご理解いただけたと思います。
私たちの苦しみの根源は執着にあるとブッダは見抜きました。
恋愛や決別などの人生の苦しみの多くは執着によるものです。

過去に執着することから脱却して、将来に向かって歩んで行くことで苦しみから脱却することができるのです。

 

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