【人気の桃太郎の名前がついた神社】
「桃太郎」といえば、日本の昔話の定番ともいえる存在であり、現在でもCMで話題となり、様々なアレンジを施されたものが登場するほどの人気をもっています。それだけに桃太郎の名前を冠した神社というものも、いくつか存在しています。
【神様になった孫悟空】
そもそも、実在の人物ではなく、物語の登場人物が神社と関係するという時点で不思議な気がしますが、道教では西遊記の登場人物である孫悟空を「斉天大聖」として祀っており、古来からの道教の神様よりも多くの人気を集めていることを考えると、むしろ、桃太郎ほどのネームバリューがありながら、神様になっていない方が不思議なのかも知れません。
【桃太郎生誕の地に作られた魔女】
桃太郎といえば、岡山県というイメージがある方が多いかもしれません。しかし、ストレートな桃太郎神社というのは、香川県と愛知県に存在しており、岡山は「吉備津彦命」を桃太郎伝説の由来として、「吉備津神社」が桃太郎と関係しているという形になっています。御祭神を含めて、ある程度説得力のある岡山に比べると、その他の神社は、なかなかインパクトが強いものです。今回紹介する愛知県にある桃太郎神社は、桃太郎を拾ったおじいさんの屋敷跡に建立されたという「桃太郎誕生の地」とされているのです。
【お婆さんが洗濯をしていた岩場】
繰り返しになりますが、そもそも、桃太郎は実在の人物ではありませんので、香川にしろ愛知にしろ、誕生の地を名乗るのは無理がある気もするのですが、こちらは境内になんと「お婆さんが洗濯をしていた岩場」が存在しています。なぜ、お婆さんが洗濯していたとわかるのか? それは岩場に「お婆さんの足跡が残っている」からです。岩に残った手形や、足形というのは、実は全国各地にありますが、「鬼や高名な僧侶など超常的な力を持った存在」が由来となっているのがほとんどであり、単なるお婆さんが足跡を残していたというのは、珍しいケースといえるでしょう。
【お供や鬼、もちろん桃太郎までコンクリート像が待ち構える】
参道前の鳥居にはお供の猿のコンクリート像が待ち構え、キジや犬といったお供も側に控えています。さらに、参道を進むと桃から生まれたばかりの桃太郎の像、さらに鳥居には桃マークという、神社の名前を見なくても桃太郎ゆかりであることが、一目でわかるようになっています。本殿の前にはピンク色をした、独自の「桃型の鳥居」があり、ここまで徹底していると清々しい気分にさせてくれます。
ただし、ちょっと興味深いのは御祭神はストレートに桃太郎というわけではなく、かといって吉備津彦命でもなく、「大神実命」ということになっています。この神様は黄泉国で伊弉諾尊が、襲ってくる邪鬼から逃れるために桃の実を使い難を逃れたことから、桃に神格を与えて生まれた神様です。こちらの神社によると、その「桃の神様の生まれ変わりが桃太郎」なのだそうです。
境内には、さまざまな場所に桃太郎や鬼、お供などのコンクリート像が設置されています。こちらは東海地方でコンクリート像の第一人者である「浅野祥雲」氏によるものであり、なんとも言えないユーモラスさと迫力が備わっていることから、この像を目的で訪れる人も多いスポットです。
【鬼のミイラや金棒が展示されている】
さらに宝物館も存在しています。一度、火事で燃えてしまったということで、以前展示されていた「桃太郎が産まれた桃の化石」「鬼のミイラ」「鬼の骸骨」「鬼の角」などは写真のみの展示となっていますが、難を逃れた珍しいものとして、鬼ヶ島で犬がかみ切ったという「鬼の珍宝」や、鬼が持っていた金棒などという不思議なものが展示されています。
ここまで堂々としていると、すでに神社というより「テーマパーク」といった感じもありますが、実際にこちらの神社は、神社という名前がついているものの、「昭和に入ってから地域活性化のために作られたもの」です。そのために、一般の神社ではつきものとなっているお札などの授与が行わないなどの条件のもとに建立されました。とはいうものの、すでに80年以上の歴史を持っている神社であり、最近ではテーマパークとしてだけでなく、桃太郎の伝説にあやかって、「強い子供に育って欲しいという祈願」が行われるようにもなっています。
古くからあるパワースポットとは違い、イロモノ、ゲテモノと感じる人も多いかもしれませんが、冒頭で紹介した道教のように物語の登場人物であっても、多くの信仰を集めることが出来れば、れっきとした神様として活躍するようになるわけですので、桃太郎神社のような、ちょっと突き抜けた場所というのも、一度は訪れてみることに価値があると思います。
(トップ・文中写真はウィキペディアより)