【ゴキブリと都市が融合】
ちなみに、なぜこんな姿になったのかを、制作者である多摩美術大学客員教授の「天野裕夫」さんは、護鬼佛理天像制作意図として「ゴキブリは地球上に現れてから3億年たつが、新参者の人類がつくりだした都市を舞台にともに繁栄し、愛憎劇を繰り広げてきた。ゴキブリ側の片思いの感は否めない。ここにゴキブリの腹上に寄生する都市という逆転の構図を彫刻することで、我々の薄情さをうめあわせたいと思う」と碑に記しています。
要は「ゴキブリと人間と都市がミックスした姿」だから、インパクトのある異形になったというわけですが、このあたりの制作意図からいっても、供養塔の中でも珍しいケースといえるでしょう。
【他にもある害虫の供養塔】
ちなみに、似たようなケースとして、パワースポットとしても名高い和歌山県の「高野山」、その奥の院に続く参道には「しろあり供養塔」というものがあります。こちらは、「日本しろあり対策協会」が建立したものであり、ゴキブリと同じように防除作業によって、多くの命が失われた「しろありを供養する」ためのものです。
こちらは、供養されている存在は珍しいですが、その姿は一般的な供養塔と同じであり、建立されたのも、今から「40年以上前という歴史あるもの」ですが、護鬼佛理天像と違って、みかけのインパクトがないために、話題にはなっていません。しかしながら、途中から、シロアリだけでなく、防除に携わった功労者も合祀されるようになったこともあり、現在までも高野山で大切に祀られ、定期的に慰霊祭も行われているのだそうです。
護鬼佛理天像は建立されたのが2000年前後ということですので、まだ歴史はありませんが、今後数百年たったならば、その異形がいつしか、独自の神様として祀られるようになっているかもしれません。
Soul of pests also to cherish.
Memorial tower of cockroaches.