無意識のチャネリング―「崖の上のポニョ」と「君の名は」前篇

多くの人々が同じ時期にみる共通するビジョンは、個人を超えて、その時代を表します。 また、大衆芸術は、多くの人が無意識に感じている(つまり無意識のチャネリングしている)ことを視覚化するからこそ、ヒットするという側面があります。

 

ポニョの内容には、他にも共通する内容が多々あります。

串本には、補陀落渡海の風習があり、平家物語や、遠藤周作の小説にもでてくるのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。
海のそこにある補陀落浄土をめざして出航するのですが、生きて帰ってはこれない、一種の入水自殺のようなものでした。
これは、もともとは、海の女神に男性の生贄をささげる儀式だったものが、仏教伝来後にそのような形に変容したものではないかと思います。

この風習は、メソポタミアのイナンナ(イシュタル)の聖婚に非常に似ています。
古代の中近東では、神話にのっとって、王として選ばれた生贄の男性が、女神の夫として捧げられたのです。
水の女神は、適度な水で豊穣をもたらすこともあれば、荒ぶれば、洪水や津波など水難をもたらします。

ポニョのお母さんは、巨大な水の女神(しかも中近東風のいでたちです)、お父さんは、元人間(生贄の夫も元人間です)で海底に住んでおり水陸両方をいったりきたり、二人の娘ポニョは人魚です(本来地上にはこれません)。

宮崎駿は、この神話を知っていたのかもしれません。
では、なぜこの物語をモティーフにしてアニメをつくったのでしょうか? 人魚、海底、冥界、女神(あるいは観音)泉、三途の川、船、津波、離れ島 海底の宮殿……この時期、クライアントさんたちがみた同様のビジョンを、彼もみたのではないでしょうか。
芸術的イマジネーションとして。

霊媒体質の人は、発せられたエネルギーを無意識にチャネリングしてしまいます。
それは、何所から発せられたのでしょうか? 海の底の異界から……かれらは、海底の門が開き、何かが近づいてくる気配を感じたのです。

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多くの人々が同じ時期にみる共通するビジョンは、個人を超えて、その時代を表します。

また、大衆芸術は、多くの人が無意識に感じている(つまり無意識のチャネリングしている)ことを視覚化するからこそ、ヒットするという側面があります。
目の前にあらわれた映像が、無意識に自分がみたイメージと似ているので、なんとなく親近感がわくのです。
「そう! それ!」って思うのです。

よくポニョは東日本大震災を予見していたといわれます。
その通りですが、事後に、あれは予見だったといっても意味がありません。
前もって傾向と対策に活かせないといけません。
が、ビジョンを解釈するのは大変な作業です。

今、1990年代のアニメが多くリバイバルされています。
エヴァンゲリオンの再放送が始まり、1999年の杜央町(仙台)を舞台にしたジョジョの不思議な冒険も放映されています。
20世紀の終わりにはやったアニメが今またリバイバルしている意味は何でしょうか。

いったい、これは何を意味するのでしょうか? かってのポニョのように、今爆発的にヒットしている映画「君の名は」を、考察してみるのもよいかもしれません。(つづく)

マユリ

※写真はすべてイメージです

 

 

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