TPOとは
TPOという言葉があります。もはや若者から大人まで幅広い方に浸透している言葉です。
「Time(時)」、「Place(所)」、「Occasion(場合)」の頭文字を取った略語で、「時と場所、場合に応じた服装や態度、方法などの使い分け」を意味します。
よく、ファッションの話をする時、TPOという言葉が出てきます。例えば、就職活動をする時に、リクルートスーツにリュックサックを背負っているとか、なぜか革靴ではなくスニーカーを履いているとか、微笑ましくも致命的な若者(ときどき若くない人も同じ事をしていますが……)の事を「TPOがわかってない」と表現したりしますよね。
それらを「これは個性なんだ!」とか「目立つためのセルフ・ブランディングなんだ!」という方は確信犯かもしれません。ただ、一般的にはそういう無茶ぶりが許されるのは、裸の大将(山下清)か、織田信長くらいのものだと思います。
言葉の意味を噛み砕いて考えてみると、服装だけの事に限った事ではありません。今の時代となると、もっと広い意味合いで使われています。では、なぜファッションのイメージが強いのでしょうか。
実はTPOは、20世紀に活動した日本のファッションデザイナーの石津謙介氏が発案した概念なのです。石津謙介氏はVANの創業者で『メンズファッションの神様』と呼ばれ、日本のファッション界にとても大きな功績を遺した方です。まさか日本発祥の言葉だったとは考えもしませんでした。
てっきり英語だとばかり思っていました。そう考えると、海外ではこの言葉は通じないと言う事になるのでしょうか。英語に詳しい方、私にこっそり教えて下さい。
ちなみに、私たちがよく使う「カジュアル」、「Tシャツ」、「トレーナー」といったファッション用語や、「キャンペーン」や「プレミアム」といったといった業界用語も、VANの企業戦略から生まれたものだそうです。もしかすると、TPOにファッションのイメージが強いのは、このような経緯で生まれた言葉だからかもしれませんね。
言葉のTPOは
ファッション以外でも日常生活においてTPOという言葉はたくさん使われています。砕けた言い方をするなら「空気が読めない」という意味合いに近いと思います。ファッションでも、それ以外でも、TPOを間違えると、とんでもない事態に陥ってしまいます。
特に使い分けが必要なのは言葉です。言葉には、その人の性格や考え、品性が現れやすいのです。普段から、どのような言葉を発するかによって、その人に対する印象も変わってきます。
また、どのように話すかも大切です。同じ言葉でも、言い方によって受け止め方も変わってきます。
私たちは幼い頃から言葉遣いについて、家庭や学校で教えられてきました。目上の人には敬語を使うとか、目下の人には優しく話すとか、そういう事です。では、その教えが必ずしも活用されているかと言うと、必ずしもそうではないようです。
「ママ」が「恐いオバサン」だと思われてしまった!?
例えば、ママが「おい、お前!」とか「ざけんなよ! コラ!」とか、子供に対して普段から言っていたら、どうでしょうか。たまにスーパーなどにいますよね、そういう人。
恐らく、子供たちはそれを日常語だと思い込んでしまって、家の外でもそういう言葉使いになってしまうと思います。これは方言とか、愛着がある言葉とかではなく、単なる乱暴な言葉です。
残念ながら、これでは社会では通用しません。それ以前に、もしママがそういう言葉を早い段階で自分自身が改めていたらもう少し違った人生になっていた可能性も高いです。言葉は人生を作るのです。
子供の頃からそういう言葉で生きてきた人たちは、大人になってもそういう言葉が通用する世界でしか生きられないので、誰かが指摘してくれたり教えてくれたりする事は少ないかもしれません。
言葉遣いについては大人になった今でも、誰かに指摘されないまでも何かしら求められているのではないでしょうか。
セレブに見せかけようとして失敗!?
ちなみに勘違いセレブ系の方が「おほほ……」みたいな笑い方をしてみたり、変に気取ったイントネーションで喋ったりする事があります。わかりにくければ、ドラえもんに出て来るスネオくんのママみたいな人をイメージしてくれるとわかりやすいかもしれません。
彼女を見て、「うわぁ、品の良さそうな奥様だなぁ……」と好感を持てるかというと、決してそういうわけではありません。「ざます系」と揶揄されて終わりです。あれはあれで言葉のTPOがわかっていないのです。
男性では『おそ松くん』という古いマンガに出て来るイヤミというキャラクターのイメージがわかりやすいと思います。「シェー!」という人です。誰も彼を品の良い紳士とは思いませんよね。