アーユルヴェーダの消化の概念を最先端の栄養医学から考察する

アーユルヴェーダは神様がもたらした医学と言われますが、だれがもたらしたかは別として、現代科学とも一致しているアーユルヴェーダの知識をとり入れることこそ、健康維持のための最先端のアプローチだと思います。

こんにちは。アーユルヴェーダスクール ジヴァ・ジャパン代表でアーユルヴェディック・カウンセラーの文分千恵です。

アーユルヴェーダによると、体レベルの病気は胃から始まると言われています。あくまでも体レベルでの病気の表出のことです。病気の根本原因はいろいろあります。たとえばメンタルストレスが根本原因かもしれません。

メンタルストレスが強まると、コルチゾールやノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンは交感神経を優位にします。交感神経がつねに興奮していると消化力が低下します。消化力が低下すると胃のなかに未消化物がたまり、それが毒素となって体の病気を引き起こします。体レベルの病気は胃から始まると言われる理由はそこにあります。

見方を変えると、体の病気の予防には高い消化力を維持することが大事だということです。だからアーユルヴェーダは、自分の体質に合ったサトヴィックな食事に加えて、消化力を適切に高めることを説いているのです。いくら良い食品を摂ったところで、消化力が低ければ消化吸収されないからです。

 

アーユルヴェーダも栄養医学も咀嚼の重要性を説いている

時空を超えた現代。アメリカで発達した栄養医学(Nutritional Medicine)も消化の重要性を説いています。

アーユルヴェーダと同様、消化の不備がいろいろな不調をもたらすと考えています。そして、体調不良の改善には患者本人の参画意識が欠かせないというのです。つまり自分の消化力がどうなっているのかを知ることが不調改善の第一歩なのです。消化は口から始まります。

唾液には唾液アミラーゼ(プチアリン)という消化酵素があり、デンプンを分解して吸収します。唾液アミラーゼは食べた物を咀嚼すればするほど分泌されます。

つまりよく噛めば噛むほどデンプンの分解吸収が進むということです。高い消化力は咀嚼から始まります。栄養医学と同様、アーユルヴェーダも咀嚼の大事さを説いています。アーユルヴェーダには有名なフレーズがあります。「固形物は飲み、液体は噛め。」固形物は液体になるくらいまで噛み、液体は固形物のように噛んでから飲まなければならないという意味です。

アーユルヴェーダは一口当たり何回咀嚼すればよいと言っているかというと、なんと32回です! これだけ噛めば、食べた物はドロドロの液体になりますね。

chewing

 

咀嚼すればするほど胃酸が分泌される

胃酸は胃のなかに入った食べ物を分解するのに欠かせません。胃酸によって食品中のタンパク質を分解する消化酵素であるペプシンが活性化されます。

アーユルヴェーダは消化酵素のことを「アグニ」と言い、特に胃のなかのアグニである「ジャタラグニ」を重視しています。もしかするとジャタラグニはペプシンのことかもしれませんね。ペプシンが十分でないとタンパク質が分解されません。

食べた物は大きな細胞のまま腸に入っていくことになり、いろいろな不調を引き起こします。ペプシンをパワーアップするためには胃酸の適切な分泌が必要であり、胃酸の分泌には咀嚼が欠かせません。アーユルヴェーダの5千年前の賢者達はそれを知っていたのです。

さらに胃酸のpH(ペーハー)も重要です。pHは水溶液の酸性度やアルカリ性度を測る単位のことで、pH7以下が酸性です。数値が低いほど酸性度が高いことを示しています。

健全な胃酸はpH1~5程度の酸性に傾いています。胃酸のpHがアルカリ性に傾くと消化酵素を活性化できないため、ミネラルの吸収の低下、ビタミンの吸収の低下、タンパク質の吸収の低下が起こってきます。