一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.143 「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」

「恐怖」、スピリチュアル的に見ても私たちが健やかに生きていこうとする中で、一番の障害になるものだと思う。

文句なしに面白い傑作ホラー‼︎
それ=「恐怖」は生涯つきまとう怪物

基本的にホラーは観ないようにしてるのだけど、本作は原作がスティーヴン・キングだし、昔テレビドラマが凄く話題になってたし、チラシのビジュアルから「これ、ホラー?」と思い試写に行った。

したら、私の半生で観たホラーの中で、一番怖い映画だった……。
始終鳥肌がたちまくりだった。
しかし、むちゃくちゃ面白かったんである。
もう感情がジェットコースター状態。
恐怖に震えあがり、安堵し、ほっこりし、また飛び上がるほど驚かされる。
まるでお化け屋敷なのだ。

観終わって試写室を出たら満面の笑顔と絶叫で「怖かったよお~‼︎」と地団駄踏んで悔しがったり喜んだりと大騒ぎ。
一緒に観ていたワーナーの宣伝嬢ふたりと大盛り上がりでいかにあのシーンが怖かったか、凄かったか口々に喋り倒して楽しいのなんの、飲み会のノリである。
こんな映画めったにないよ。

 

感情の運動ができてスッキリ!
開巻から不穏で不気味な展開に引き込まれ

とにかく感情の運動をしたのでその日はスッキリ!
ものすごく気分が高揚、身体の細胞が活性化して、ルンルン。
ぐっすり寝ることができた。
なるほど、ホラーってのは、こういう作用があるのだナ、とたまにはホラー観なきゃナ、と痛く納得したのである。

さて、少しお話を。
最初のシーンから不穏で不気味なんだけど、雨の日に兄が作ってくれたおもちゃの船を外に一人で浮かべに行った弟くん。
しかし、排水溝におびただしい血のあとを残して弟は行方不明に。
兄のビルは弟が今もどこかで生きていると信じているが、弟のことはビルのトラウマになっている。
そして、それからそのデリーという静かな街では何人もの子どもたちの失踪事件が起きる。その街には言い伝えがあり、古代から棲息する姿を自在に変える怪物がいて、その怪物は27年ごとに冬眠から覚めて子どもたちをむさぼり喰うというのだ。
怪物の武器は子どもたちの持つ「恐怖」。
怪物はピエロの姿で現れ、子どもたちの心の中の「恐怖=トラウマ」を再現して捕えさらっていく。
ビルたちいじめられっ子七人がこの怪物に立ち向かうのだが……。

 

恐怖は人間が持つ強い感情
だから皆共感する人間ドラマの仕上がり

その怪物のピエロ、ペニーワイズが大活躍する。
最強の敵だ。
だって武器がその子が持つ「恐怖」なんである。
それを克服しなきゃ絶対に助からない。
たとえば、ビルには何度も弟くんの幻影を見せて誘い込む。
ビルは弟を一人で外に出したことに罪悪感や後悔があるから弟のことになると盲目状態になる。
さすが、スティーヴン・キングだけあって、話が巧妙で秀逸。
ただの怖がらせホラーではなくて、人間の一番のウィークポイントを鍵にしている原作は映画でも生かされていて、一種の人間ドラマとしても楽しめる。

仲間の中で紅一点の少女、べバリーの勇気や、彼女を巡る淡い恋のお話も心温まり、血まみれの中の白い花のように清浄だ。
七人それぞれの「恐怖」の描写もいちいち納得で夢中になる。
「恐怖」は人間皆が持つ強い感情なので共感するのだろう。

 

かつて「恐怖」はこの世に存在しなかった
「それ」に対峙する方法を見つける知恵

この「恐怖」、スピリチュアル的に見ても私たちが健やかに生きていこうとする中で、一番の障害になるものだと思う。
当初、この世に恐怖=恐れ=不安というものはなかったそうである。
しかし、いつの間にかそれが人間の心を支配するようになって、今では切り離せないものになっている。
本作のコピー「“それ”は、どこにでも現れる。“それ”は、どんな姿にも形を変える。
“それ”が見えたら、終わり。」なのである。
「恐怖」を頭から追い出す、考えない、克服し振り払うことがどれだけ大変か。
人間の永遠の課題である。

でも、生きていく限りそれが付きまとうのであれば、それをバネにして日々を送るしかないと思う。
それに囚われると人はダメになる。
そのことを認識して「やけくそになる」「何も考えない」「アホになる」等々という自分なりの方法を持つことは絶対必要だろう。
それが、生きる知恵なのだ。

そんなことを、本作「IT」を観終わって気持ちが落ち着いてから思った。
「IT」=それは手ごわいのだ。
文句なしに面白い傑作ホラーです!

 

監督 アンディ・ムスキエティ
原作 スティーヴン・キング
脚本 チェイス・パーマー キャリー・フクナガ ゲイリー・ドーベルマン
出演 ジェイデン・リーバハー ビル・スカルスガルド フィン・ウォルフハード
ジャック・ディラン・グレイザー ソフィア・リリス ジェレミー・レイ・テイラー
※135分

※11月3日(金・祝)大阪ステーションシティシネマほか
全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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