一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.117 「この世界の片隅に」

日本人は賢い民族である。それを一人一人が確信してこの乱世とも言える現代を生き抜かなければならない。

戦時下の広島は呉、そこで生きる
すずの日常を「活写!」した感動アニメ!

こうの史代さんの漫画は以前読んだことがあって、その漫画で私は号泣した覚えがある(タイトル失念)。
泣けて泣けて困った。こうのさん原作の映画『夕凪の街 桜の国』も号泣した。
傑作だった。

本作の原作漫画は、昔買った記憶はあるのだけど、読んでいない。
日々、買った漫画を読めないままで何年もたってしまうことが多い。

で、こうの史代さんの漫画は私の中で「特別なもの感」が強い。
読めなかった原作だけど、日を置いてアニメ化されて私は観ることができた。
めぐり逢わせだね。原作もそのうち読んでみよう。しかし、行方不明なんだけど……。

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楽しみに試写を観たが、思っていたよりギャグ満載で明るくて拍子抜けした部分もあった。
でも、後半はやはり涙だった。

笑わせて、ファンタジー的な部分もあり、リアルな悲しみもしっかり描いて感動させて、それでも人生は続いていくのだから、生きていかねばね……と終わる。

繊細な繊細なアニメ作品である。

 

絵を描くのが好きでちょっとぼんやり
すずは絵で心を解き放つ

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お話はすずというちょっとぼんやりした、絵を描くのが好きな広島に住む女の子が主人公だ。
時は1930年代。
すずは町で迷子になって「ばけもん」にさらわれそうになったり、おばあちゃんの家で座敷童子を見たりと不思議な体験をする。

そんなすずも18歳になり、是非にと請われて軍港の街、呉にお嫁に行くことになる。
夫になる周作や、彼の両親、義姉、姪とのなかなかに波乱の日々。
しかし、すずは持ち前のひょうきんさと明るさで戦時の生活を工夫を重ねて生きていく。

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そして、1945年の夏がやってくる……。

広島の原爆にあった人々の描写。ここでやはり、泣いてしまった。
どうあっても、泣いてしまう。

 

日本人の強さ、賢さ、美しさ
何があっても生きていかなくちゃ……!

でも、本作で心に残るのは、戦時下を細々と家族で力を合わせて生活に工夫を凝らして生き抜いた日本人の健気さ、堅実さ、勤勉さ、強さ、美しさだろう。

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すっかり様変わりした日本だけど、まだまだ本作に感動し、共感する心は皆持っているはずだ。
また、ここで描かれる生きる姿勢は戦時下でなくても現代でも必要なものだろう。

日本人は賢い民族である。
それを一人一人が確信してこの乱世とも言える現代を生き抜かなければならない。
そのヒントになるような、すずの生き方である。

すずのほんわかしたかわいい声が素晴らしく役に合っていて、「うまい声優やなあ~新人?」と思っていたら、能年玲奈でした(のんに改名)‼︎ 復帰第一作で、素晴らしい仕事を見せてくれた。

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軍港の呉の街や軍艦、広島の田舎、町の様子などの絵が素晴らしい。
改めて日本は美しい国だと思わされた。

 

監督・脚本 片渕須直
原作 こうの史代
声の出演 のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ
126分

©こうの史代・双葉社/『この世界の片隅に』製作委員会

※11月 12日(土)~全国ロードショー

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