一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.105「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

いかんいかん。世界は広いんだ。 凝り固まりがちな頭を一発殴られた気分になる。 それこそ、優れた映画の本領だ。 必見です。

 

再犯率が世界で最も低い国ノルウェー
愛で犯罪者を立ち直らせる

そしてノルウェー。この国の刑務所は牢屋ではなく、一軒家……なのだ。殺人で服役してるのにナイフや包丁で料理している囚人……。死刑制度はなく、最長刑期は21年。数年前に起こったオスロ島での銃乱射事件の犯人も50人以上殺したのに21年で出てくる。
当時、犯人に対してノルウェーの人々が言った「彼が悪いのではなく、犯罪を起こさせた社会が悪い。私たちに愛が足りなかった。彼に愛を与えなければ」というコメントが目を引いたが、本作にはこの事件で息子を殺された父親も登場する。父親はマイケルの質問に「犯人に復讐しようなんて考えていない」と淡々と語る。
この国の再犯率は世界で最も低いそうだ。
刑務所で愛を与えられて皆、出所するのだろう。
キリスト教的な考え方と言えばそうだが、実は真実というか、本質的な考え方であり、最良の方法なのだろうと考えさせられる。

メイン1

 

アメリカ的価値観に毒されている日本人
久々の、頭に一撃をくれる必見快作!

ラストのアイスランドでは、マイケルはアメリカ国民の姿勢に対して辛辣な意見を銀行の女性CEOから浴びせられる。彼はグウの音も出ず、苦渋の末一言発した言葉に私は「男はどこまでいっても子供なんだな」と思ってしまった。
本作ではマイケルは終始子どもみたいに驚いているのだが、反論も子どもなのだ。思えば、ヨーロッパは大人の国という印象だ。それに対してアメリカは少年という印象。日本は……幼児??

某学校の体験授業で「日本はアメリカの植民地ですよね??」と受講者に聞くと誰も反論しなかった。立ち会った教務の女性(25歳)に振ると「そうです!」と元気一杯に答えた。おいっ。まあ、植民地みたいなもんだけどね。

日本はアメリカの植民地ではないけれど、アメリカの価値観が大きく浸透、大きく影響している国である。しかし、私はそれを苦々しく思っている日本人である。だから本作には驚愕し、勇気付けられた。また、同時にアメリカ的な考えに毒されている自分も再確認した。
いかんいかん。世界は広いんだ。
凝り固まりがちな頭を一発殴られた気分になる。
それこそ、優れた映画の本領だ。
必見です。

 

■監督・脚本・製作・出演 マイケル・ムーア
■119分

※5月27日(金)~全国ロードショー

 

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