一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.105「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

いかんいかん。世界は広いんだ。 凝り固まりがちな頭を一発殴られた気分になる。 それこそ、優れた映画の本領だ。 必見です。

世界は広かった!! 各国の常識に驚愕、
感動する傑作ドキュメンタリー!

教えている学生に「マイケル・ムーアって知ってる?」と聞くとほとんどの学生がハリセンボンの突っ込み「マイケル・ムーアか!」で名前だけ知ってるとのこと(笑)。

たしかに、いまどきの若者でドキュメンタリー映画を観てるなんてほとんどいないんだろうな。

しかし、マイケル・ムーアの撮るドキュメンタリーは衝撃的な「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)以来、毎作抜群に面白かった。最近新作公開されないな、と思ってたら6年ぶりの新作が登場した。

今作もユーモアと茶目っ気たっぷり。そして、ものすごく元気がでる。感動させられる。知らないことを教えてくれる。そして、人生の苦味もラストにはちゃんと。
でも、なにより、「ああ、世界はまだ大丈夫!」と思わせてくれることが素晴らしい!
単純な私は「日本がダメになったらヨーロッパに行けばいいんだ!」なんて浅はかにも思ってしまったけど(笑)。

 

突撃取材9カ国の常識と制度と価値観と
とんでもない? いや、良いんじゃない!? それ

さてさて。今回マイケルはアメリカ軍の依頼を受け、世界各国への突撃取材を命令される。その命令の内容とは、その国ならではの常識を略奪してアメリカに持ち帰ること。侵略政策が行き詰まり観のあるアメリカは、その各国の常識をパクッてアメリカでも生かそう、というものなのだ。
しかし、世界は広かった!! とんでもない驚きの常識が世界にはあったのだ!!

まず、イタリア。
一年間の休暇が8週間。もち有給。一年12ヶ月働いて13ヶ月分のお給料がもらえる。産休は5ヶ月間。もち有給。会社での昼休み2時間。それでも、生産高は上がり続けている。
マイケル絶叫! 取材された夫婦はアメリカの労働条件を聞いて絶句! かくも違う待遇の差に笑えてくる。

次、フランス。
小学校の給食はどんな田舎の学校でも熟考されたフレンチ・フルコースが支給される。食器はすべて陶器。チーズを必ず食べる。水をよく飲む。コーラは飲まない。フライド・ポテトやファースト・フードはあまり食べない。
マイケルが子どもに強引にコーラを飲ませて美味しいと言わせていた(笑)。
コーラやファースト・フードばっか食べてるからマイケル、数年前より巨大な肥満体になってるんだろっ。歩くのも大変そうでちょっと心配。

サブ5

 

フィンランドの教師の教育方針にうるっ。
子どもが学ぶってこういうことだった……。

かくのごとく全9カ国を突撃訪問するのだが、私が感動したのはフィンランドとノルウェー。フィンランドでは宿題という制度がない。年間の授業時間もヨーロッパ最短で、皆全く勉強しない。で、何してるかというと、木に登ったり音楽を演奏したり、工作したり……。しかし、それが子どもには必要なんだと教師全員が力説する。そしてこの国は学力ナンバー1国家なのだ。勉強しないのに、生徒たちは何ヶ国語も喋れるという。

ちょっとうるっとしてしまった。教師たちの生徒への眼差しや考え方が素晴らしくて初心に帰る思いだった。そう、教育とは子どもの自主性を育てることこそ大切なのだ。詰め込みや、宿題は決して子どものやる気を促進したりはしない。
私もこれに習い、「宿題や課題なしにしよっか?」と学生に聞いてみたら、「え~っ課題や宿題ないと全然やらなくなるから、出して~」と言われてしまった……。
根本から改善していかな、この国はダメみたいね(笑)。