あなたの身を守る「手にこめられた神秘」

【人間が進化したのは手が器用だったから】

私たち人間にとって、手というのは「最も使用頻度の高い器官」であり、なおかつ敏感で細かい作業もできる器官でもあります。

人間が文明を築いたのは、他の動物に比べると手先が器用であり、他の動物では不可能な動作がいくつも行えたためだったという説もあるほどです。

手先が器用だったために、色々な道具を作れたということもありますが、最近の研究によると指先の細かい筋肉を動かすためには、脳の前頭葉にある「運動野」という部分を多く使用する必要があるということがわかっています。
ここが刺激されると、脳全体の血流が増大しますので、それによって、「人間の脳は進化してきた」のかもしれません。

【指先を使うことで健康になる】

この指先を使うことで脳が活性化するというのは、現在でも、「認知症の予防や脳機能の回復といったリハビリ」のために活用されており、「折り紙や手遊び、指体操」などを行うことで様々な成果があがっているのだそうです。

そんな指、さらには、人体の縮小版と呼ばれるほど多くのツボが集まっている手のひらは、物理的な面でも重要なのはもちろんですが、古くからスピリチュアルな力が秘められているとも考えられてきました。

【2800年以上前から存在するお守り「ハムサ」】

その証拠といえるものが、2800年以上も前から現在に至るまで女性を守るとして信じられてきた「ハムサ」。
別名、「ファティマの手」「ミリアムの手」などとも呼ばれるこちらのお守りは、「手のひらに目がかかれている」という意匠をしています。

ハムサとは、そのものズバリ「五本指」という意味であり、手そのものを表しているわけですが、ファティマやミリアムは人名となっています。
「ファティマは、イスラム教の預言者であるムハンマドの娘」、「ミリアムはユダヤ教の預言者であるモーセの姉」ということで、さまざまな宗教でこのモチーフは使われていることがわかります

キリスト教に取り入れられると「聖母マリアの手」になるハムサですが、「女神の手をモチーフにしていた」ということは確かなようです。
女神がそれぞれの宗教に取り入れられることで、対応している女性の手に変化します。

【邪眼除けだったハムサ】

かつて呪いと同じぐらい怖れられていたものとして「邪眼」があります。
邪眼というのは、文字通り視線を向けるだけで人を不幸にする力を持った目のこと。
この力を持った人物というのを古代の人は非常に怖れており、それから身を守るためのお守りが、現在でも世界各地に残っていますが、「ハムサも元々は邪眼除けだった」といわれています。

邪眼への怖れが時代と共に薄れるに従って、女神の手がモチーフであるハムサは、「女性を守るためのお守り」とされるようになり、「子宝祈願や安産祈願、さらには嫉妬や嫉みから守ってくれる」というような要素が付け加えられていったのです。

【指の関節に秘められた神秘の力】

このようにお守りとしても使われる手ですが、中国には「指の関節を利用することで、自らの身を守る」という手法が存在しています。

それは、道教や日本に古来存在していた呪禁道などには「掌訣（しょうけつ）」と呼ばれる技法です。

こちらは指の関節に「十二支や八卦」などを対応させて、それらを親指の先で押さえることで「任意のエネルギーを引き出して使うことができる」というものです。
指や手を使うスピリチュアルな技法というと、密教や修験道などで使われる印が有名ですが、様々な種類と複雑な形がある印に比べると掌訣は非常にシンプルなものとなっています。

例えば、その年の初めの雷が鳴ったときに、決められた順番で指の関節を押さえてから呪文を唱えながら雷の気を吸収することで、「破邪の力をチャージする」というような技法や、十二支の順番に指の関節を押さえ、さらに自分の干支、最後に午に対応するヶ所を押さえることで、「自らを守るエネルギーを手に宿す」といった方法が存在しています。