カード占いの中ではその王座を譲ることのない、世界中で大人気のタロット占い。
タロット占いを楽しむ人口は、年々増え続けていると感じています。
素晴らしいデザインのタロット・デッキも、次々と生まれ続けていることでしょう。

しかし、書店に並んでいるタロット占いの本を見ると、どの本も使用しているのは一般的にライダー版と呼ばれている、ウェイト＝スミス・タロットばかり……。

実際にタロット占いを楽しむ人の中でも、このライダー版しか使っていない、という人も多いのではないでしょうか？

ライダー版の絵柄はシンプルで見やすく、どのような場面なのかが大変わかりやすく描かれています。
そのため占いをする上で、大変読み取りやすいタロットであるといえるのです。

また、タロットカードの歴史を振り返ると、それまでは単調なデザインだった小アルカナの数札に、具体的な場面を描いた最初のタロットが、このライダー版なのです。
ですから、爆発的な人気が出るのもよくわかります。

しかし、世の中にはせっかくさまざまなタロット・デッキがあるのに、誰もかれもがライダー、ライダー……では、どこか殺風景で地味な感じがしてしまいますよね。

例えばプロの占い師をあちこち巡っているお客様から見ると、「また、このカードか……」と退屈に思われてしまうでしょう。
皆が使っているため親しみは感じるけれど、新鮮味は感じられないのです。

マルセイユ・タロットはすべてのタロットの源泉

タロット・デッキの中でライダー版の次に有名なのは、「マルセイユ・タロット」であるといわれています。

マルセイユ・タロットは、16世紀にはその原型が存在していたといわれ、20世紀初頭に生まれたライダー版より、大変古い歴史を持っています。
ライダー版も含めて、現在流通しているすべてのタロット・デッキの源泉である……と言っても過言ではありません。

マルセイユ・タロットのデザインは、当時の木版画の素朴なイメージを残し、原色を中心とした大変シンプルなものになっています。
絵柄がシンプルであると、占ったときに読み取る回答のメリハリが、大変ハッキリとしています。
モヤモヤッとするような曖昧な回答が出ることが少ないのです。

なぜ人気が出ない？　マルセイユ・タロット

それなのに、なぜライダー版と比べると人気がなく、使っている人も圧倒的に少ないのでしょうか？

まずは、数札がシンプルすぎて占いに使いにくい、という点が理由として挙げられます。

例えば「金貨4」であれば、金貨が4個しか描かれていない……というデザインなのです。
絵柄から意味をイメージすることが難しいため、各カードが持つ意味を丸暗記しなければなりません。

そして、マルセイユ・タロットの解説本が大変少ない……という点が、もうひとつの理由として挙げられます。

数札が使いにくいということもその理由ですが、それ以上に、「カードの制作者が不明のため、各カードに与えられている基本的な意味が存在しない」ということも、解説本を執筆しにくい理由のひとつです。

もともとマルセイユ・タロットは、占い用ではなくゲーム用として作成されたカードでした。
そのため、占い上の意味を持っていなかった……ということです。
基盤が存在していないので、解説書を書きようがない、というのが正直なところでしょう。
自分で意味を適当に考え出して書いてしまう……という、まったくでたらめな方向へ走ることもあるかもしれません。

信頼できるマルセイユ・タロットの本

しかし、現在マルセイユ・タロットを出版しているグリモー社が、各カードの意味を記載した小冊子を発行しています。
ライダー版もそうですが、カードの制作者が付与する意味を、最も重視すべきであると考えています。
その小冊子は、タロット・デッキの中に入っています。
ただし、英語とフランス語しか記載されていないため、日本語に訳さなければなりません。

また、それと一緒に私自身が参考にしている本に、「マルセイユ版タロットのABC」（郁朋社、2010年）があります。
この2冊を参考にすれば、マルセイユ・タロットを使って楽しく占うことができるでしょう。

ところで手前味噌になりますが、最近私自身が執筆したタロット占いの本でも、マルセイユ・タロットの各カードの意味を、記載させていただきました。
このご時世ですので、まだ出版は先になりそうです。
しかし、いずれはそちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

ライダー版一辺倒のタロット占いの世界に、もっと豊かなバリエーションが生まれることを願っています。

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