「光陰矢の如し」という言葉があります。年末になって来ると、多くの方が何故か思いだす慣用句です。月日が経つのは早いもので、過ぎ去った過去はもう戻って来ない。だから、時間を無駄にするのではなく、瞬間瞬間をもっと大切に生きようという意味です。素敵な言葉ですよね。
僕も、常にこの言葉を意識して生きているつもりではありますが、それでもやっぱり気が付くと時は思った以上に過ぎ去ってしまっていて焦る事もあります。この言葉は当たり前のように多くの方の心の中に残っていて浸透しているはずですが、それでも時々思いだしては悔んだり自己嫌悪に陥ったりしてしまうのは、それほど時間の使い方というのは難しいということなのかもしれません。
人生に挫折や失敗をしている暇は無い?
時間が大切なのは良く分かっているけれど、だからこそ多くの人たちは焦ってしまうのです。僕もせっかちなので、その気持ちは痛いほど良く分かります。
特に心を病んでしまった方々は「こんなはずじゃなかった!」「今もこうして無駄な時間を過ごしている!」と思い、「だから私はダメな人間なんだ!」と自己否定に結びつけてしまう方が残念ながら少なくありません。
心に病があるかどうかは別にしても、人生において思い通りにならない事があると、僕たちはそれらを「失敗」と捉えたり「挫折体験」と捉えたりする傾向があります。そして自ら「負け組」というレッテルを貼ってしまうのです。
そんな望まない方向に向かってしまったり、停滞してしまったりしていたら、それこそ時間がもったいない。そう思ってしまうかもしれません。
しかし「人生に挫折や失敗など必要ない」という思い込みに支配されてしまうと、それこそ心が蝕まれてしまうので注意して下さい。
挫折や失敗があるから成功がある?
多くの成功者や偉人たちは、「人生に挫折や失敗はつきものである」と口を揃えて言います。偉人でも何でもありませんが、僕もそう思っています。
そして彼らはそのセリフの後にこう続けますよね。「あの挫折体験や失敗があったから成功できたのだ」と。ここは僕があまり共感できない部分だったりします。
僕たちは「そうか!挫折や失敗は良い事なんだ!」と本当に安易に思えるものなのでしょうか。よく、相手の気持ちも考えずに満面の笑みを浮かべて「ピンチはチャンス!」と勝ち誇ったように言う人もいますが、それも微妙です。
勘違いしないでください。挫折や失敗というのは、人生においてつきものではありますが、それそのものにプラスの価値があるわけではありません。
成功者や偉人たちが挫折体験や失敗談を良いことであるかのように語るのは結果論なのです。
挫折体験や失敗体験をいつまでも引きずって、カウンセリングを受けるわけでも無く、本音を話せる友達がいるわけでも無く、どちらかといえばダメ出しや余計な助言をして来る人たちしか周囲にはおらず、自分の中で悶々と悩みを抱え込み増幅させ自滅する人も現実には数え切れないほどいるのです。それを良いことだと言い切れる人は、『ドM』だと思います。
もちろん『ドM』が悪いなどというつもりは毛頭ありません。世の中には色々なタイプの人がいてもいいのですから。
僕が伝えたいのは「挫折や失敗は良いわけでも悪いわけでも無く、必ずしも無駄でもなく、そして有意義でも無い」ということです。そこにばかりフォーカスしていると、それこそ時間があっと言う間に去ってしまうのではないかという事です。
「挫折や失敗が人生の無駄。人生の敗者へのプロセス」と思う必要も無ければ「挫折や失敗は自分を未来へと導いてくれる天からのプレゼント」と無理に自己暗示する必要も無いのです。
「TATSUMIさん。なんで夢も希望も無いような事を言うんですか?」と言われそうですが、夢や希望を奪うつもりはありません。むしろ逆です。というのも、人間は、心から思えない事を強引に信じようとしたりすると苦しくなるのです。この事を知らない人たちが、燃え尽きてしまったりするのです。
矢のクオリティを高める!
「光陰矢の如し」は、「時間はあっという間に流れ去るのだから、少しは急ぎなさい」という意味で解釈しない事が大事です。
この言葉は比喩なのです。決して「立ち止まっている暇は無い」とか「ガムシャラに前進せよ」とか、そういう意味合いも含まれていません。むしろ「時間を大切にしてね。時間の使い方を工夫してね」という意味なのです。
僕は自分自身を見失っている人や、人生を脱線した(と思い込んで悩んでいる人)たちには特に、強調して言っている事があります。それは「自分自身をきちんと見つめ直した方が良いよ」ということです。
これは「突き進め!」というのとは真逆で「立ち止まれ!」と言っているのです。「矢の如し」にたとえるなら、矢が脆く弱々しいものだったら、運良く的に当たっても突き刺さることなく落ちてしまうかもしれません。
ダーツをやったことがある方なら分かると思いますが、フライト(羽根)が曲がっていると、変な方向に飛んで行ってしまいます。チップ(先端)が曲がっていたら、的に刺さらず、弾き飛ばされてしまいます。
僕たちにとって最も大切な事は「的の何処を狙っているのか」をきちんと定め、「的にどうやったら確実に当たるか」を考え、「矢のメンテナンス」を怠らず「タイミング」を意識して、「然るべき時に全身全霊を注ぎ込む」ことが大切なのです。