いよいよティク・ナット・ハン師と対面。ダライ・ラマ法王が太陽ならば、ティク・ナット・ハン師は月

ティク・ナット・ハンに学ぶ“マインドフル”な生き方

■前回の記事
ティク・ナット・ハン師 in フランス~笑顔満載、食べる瞑想♡

澄み切った、穏やかなエネルギー
タイの存在は、まさに月のよう

前回の、“食べる瞑想”の記事でも触れたが、プラム・ヴィレッジ滞在の半ばに、ついにタイにお目にかかる機会が訪れた。

ハムレットと呼ばれる寺院が4つあるのだが、編集長と私が滞在していたハムレットから、車で20分ほどの別のハムレットに移動。林や池があり、自然が一杯。宿泊施設のほか、瞑想室や、タイの直筆のカリグラフィーなどが置いてある売店が、大きな敷地内に点在している。ここは、シスターではなく、ブラザー達が住んでいる。名前の通りの小さな村。


タイ直筆のカリグラフィー
enjoy this legendary moment(この伝説的な一瞬を楽しむ)

朝の予定は、ウォーキング・メディテーション。歩く瞑想。集合場所に待機していると、視界に、タイの姿が眼に入った。いらした!! お弟子さん数名を従え、まっすぐ、遠くに視線を据え、静かに歩を進めて来る。そして、私の目の前を、す~っと通り過ぎ、林道の中に入っていく。澄み切った、穏やかなエネルギー。“謙虚”という言葉が頭をかすめた。ダライラマ法王のお話を伺った時、太陽のような方だな・・・・・・と、思ったけれど、タイの存在は、まさに月のよう。

タイのすぐ後ろについて歩き始めた。一歩、一歩、大地を踏みしめる。彼が提唱する、”マインドフルネス“の実践を意識する。移動の手段としてではなく、ただ歩くために歩く。あせらず、捕らわれず、氣づきながら歩く。聞こえるのは、皆の足音と、自然が奏でる音だけ。木々のざわめき、鳥のさえずりに心の耳を澄ませ、肌に当たる風、空の青さや空氣の匂いに心を向け、生命の営みを感じながら。

存在している奇跡を再認識させてくれた有難い経験

いかに、普段の生活の中で、“心ここに在らず”の状態で、動いているかを思い知らされる。ヴィレッジで行う、食べる瞑想、お茶の瞑想だけでなくて、お料理をしたり、運転をしたり、シャワーを浴びたり……という、日常の、何氣ない一つひとつの動作を、心と身体を一つに調和してできたら、今、この瞬間に目覚めることができるのだろう。途中、タイが腰をおろしてお茶を飲まれる間、参加者も、言葉を交わさずに時を過ごした。ハムレットに戻ったのは一時間後くらいだったろうか。私の思考の波は、確実に緩やかになっていた。

その後、今度は、タイが我々の滞在するハムレットにいらして、法話をされる日が訪れた。けれども、その朝、シスター達が、“タイは、昨晩から熱があり、体調が良くないので、今日の法話はキャンセルかも。”と話しているのを、小耳に挟んでしまった。ご高齢でいらっしゃるし、無理はなさらないで欲しい、という思いと、何とかお話を聞きたい、という氣持ちが交差する。会場で待機していると、タイは、時間通りに現れた。清清しい笑顔で挨拶をされた後、“まずは、体操をしましょう。”と、身体を動かされる。体調不良なんて、微塵も感じられない!!

法話の内容は、知らない単語が満載で、残念ながら、さっぱり理解できなかったが、後で、シスター達に伺ったら、彼女達にとっても、かなり高度な内容だったらしい。

そんなこんなで、一週間は過ぎた。とてつもなく長かったようで、短くもあった。
今、こうして存在している奇跡を再認識させてくれた、本当に有難い経験でした。

3回にわたるプラム・ヴィレッジ滞在日記。

すべてに感謝を捧げます。