一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.46 「ソウォン/願い」

実際にあった震撼の暴行事件
立ち直る少女と家族の感動作

怖ろしい映画である。
8歳の少女が変質者に暴行される。少女は肛門破裂と直腸破裂。命を救うためには人口肛門しか手がない。8歳にして大変な手間がかかる人工肛門となった少女、ソウォン。彼女は一生人工肛門とつきあっていかなくてはならない・・・。
もう、冒頭から衝撃! 観ている間中、肛門破裂直腸破裂という言葉と人口肛門はしなければならなかったのか!? という思いがずっと頭から離れずグラグラした。私は言葉からいろいろ想像してしまう傾向があって、いったい直腸破裂って・・・と考えたら震えあがってしまい、潜在意識に刻み付けられてしまう。だから悲しい事件とか残酷な出来事はあまり観たり聞かない方が良いのだけど、映画ライターしてたらそうもいかず、しかも、怖いもの見たさというのもあり、時々「ウギャあ~!」という映画に出会ったりする。
というわけで、この映画も韓国映画ならではの過剰に劇的で露悪的なところは多々あれど(要するに日本人の私から見たらやりすぎ、見せすぎ、ね)、ソウォンと家族が事件から立ち直っていく様は父親と母親の演技はやはりやりすぎで大げさながら、ソウォン役の子役の静かな耐える演技や他の子役の演技は素晴らしいものがあった。

大人より子役の演技は特筆もの!
思わず落涙したシーン

映画は被害にあったソウォンが逆にマスコミの餌食になったり、男である父親を怖がるようになったり、犯人が「酒に酔っていて記憶がない」と証言したことで刑期が短くなったりとか、怒涛のように涙を誘う被害者家族に耐えられないことが起こる。特に父親がソウォンのために着ぐるみに入って彼女を見守り彼女との距離を縮めていくくだりは感動的で試写会場嗚咽の波。私はどうもクサクて恥ずかしいものがあったのだが、落涙したシーンはもちろんあった。
それは、ソウォンが被害にあった日に彼女を誘わずに先に登校してしまった幼馴染の男の子が、「僕があの日ソウォンを誘わなかったから、ソウォンがひどい目にあったんだ、僕のせいだ、ごめんね・・・・」とソウォンに泣きながら言うシーンはボロボロ泣きました。「君のせいじゃないよボク」って。
この男の子の描写は前半でもさりげなくてリアルで、前述したが本作は子役の演技が特筆だ。ソウォン役のイ・レちゃんも(顔が芦田愛菜似)難役を見事にこなしていたが、なんか彼女だけこの映画で「大人」だったような気がする。

しかし、韓国では犯人に被害者家族が面会できるというのは毎回驚く。日本では考えられないことだが、意味あることだと思う。

さて、本作のラストは感懐深いものがある。
結局この家族はなんとか立ち直るのだが、家族の状態はソウォンが事件に遭う前より格段に良くなっている。本作は実際の事件を元にしているが、もちろん
実際はそうでないこともあるだろう。しかし、この映画が教えてくれることは
事件が、困難があって、家族の絆は強固になり、以前より愛が深まり、彼らはより成長したということだ。
だから、ソウォンが事件に遭ったことは、この家族には必要なことだったのだ。
何事も起こることには意味がある。

監督 イ・ジュンイク
脚本 ジョ・ジュンフン キム・ジヘ
出演 ソル・ギョング オム・ジウォン イ・レ キム・ヘスク キム・サンホ
■123分
■8月9日(土)~全国ロードショー

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