「地球」の大きさと、「赤ちゃん」の大きさ

壮大な地球の歴史と人類

地球が誕生してから現在までを「1年」で表すと、人類が出現したのは「12月31日23時40分」である――、という例えを、ときどき聞きますよね。
それと同じことだけど、「地球の歴史」を「地球の大きさ」に置き換えて計算してみても、けっこう面白い見え方がしてきます。

地球の歴史は45億年。その長さを、「地球をぐるっと1周する旅」に当てはめてみましょう。
何年か前にタレントの間寛平さんが、ヨットとランニングで地球を1周する「アース・マラソン」を完走したけど、ちょうどそんな感じ。普通ではやり遂げられない、果てしなく長い距離です…。
そんな壮大な旅を、「地球の歴史」に重ね合わせてみると――

地上に最初の人類(猿人)が出現したのは、700万年前といわれます。
これは地球1周のうちどれくらいの距離に相当するかというと……、神奈川の平塚から東京までの距離にあたります。
地球というスケールからすれば、本当にものすごく短いものにすぎません。

つまり例えば、東京の「日本橋」をスタートして東回りに、遥か太平洋を越えて北米大陸を横断し、さらに大西洋を渡り、ヨーロッパ・中東・アジアを経て、再び日本列島の西側に上陸して東京のゴールへと向かう、というアース・マラソンを走っているとすれば――
もう延々と走ってきて、世界をほぼひと回りして平塚まで来たとき、やっと人類が現れるというわけです。

そこから、ゴール地点の日本橋に向かってひた走るあいだ、人類は進化を遂げていきます。
原始人が「石器」を使いはじめたのが横浜あたりで、「火」を使うようになったのは多摩川を越えて都内に入ったくらい。
人類の歴史というのは、壮大な地球の中における、いわば「通勤圏内」の話なのです――。
ここから先は、本当に驚くほど距離が短くなっていきます。

私たちの在り方を考える

現生人類「ホモ・サピエンス」が誕生したのは2万年前で、距離で表すと2km弱。これは新橋から日本橋までの距離に過ぎません。
「農耕」が始まったのが90メートル。これは商業ビルや地下鉄駅がある日本橋交差点あたりで、川にかかる日本橋そのものがすぐそこに見える場所です。
さらに「キリストの生誕」から現在までは、たった18メートルの距離になります。
大通りの向こう側の歩道にいる感じだから、こちらから大声で「おーい!」と手を振ったら、気づいてもらえる近さです。
世の中が近代化した「産業革命」は、1メートル80センチ。互いにちょっと前に出て手を差し出せば、握手ができるほどの間隔です――。

それでは、私たち「人間の一生」の長さはどれくらいになるのかというと――、日本人の平均寿命だと70センチほどに相当します。生後3カ月の赤ちゃんの身長がそのくらいでしょう。
けっこうぴたりと当てはまって、ちょっと感慨深く思えませんか?
地球の歴史が「地球の大きさ」で、人の一生は「赤ちゃんの大きさ」になるというわけです――。

それくらい地球は途方もなく壮大なものだし、一方で人間の一生も、それなりの存在感や意味のある、とてもいとおしいものなのだな、という実感が心にわいてくるようです。
赤ちゃんが小さな体で笑ったり泣いたり、手足をがんばってパタパタ動かすみたいに、人はひとつの人生を送るわけですね。
胸元に抱く赤ちゃんの笑顔は、本当に見ているだけでうれしくなるし、それは、地球の大きさにもひけをとらないくらい尊いものでしょう。
――そんな感覚でとらえるのが、時間というスケールを超越した、私たちの在り方のイメージなのかも知れません。