一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.39 『青天の霹靂』

劇団ひとり初監督作は父と息子の和解を描く感動作!
初監督とは思えない仕上がり

以前、劇団ひとりが、「オーラの泉」で前世は異星人だと言われていた。
美輪さんは、「だから新しいことを思いついて、いろいろなことをやれる才能がある」と言っていたのが今も強く印象に残っている。

本作を観ながら、今何が日本人に必要なことか、大切なことかを、異星人である劇団ひとりの前世が教えてくれているような気がした。今のままだと日本は駄目だぞ、と言われているような。

才能はあるのに、プライドの高さと意固地さからなかなか陽の目をみないマジシャンの青年。ある日、後輩に馬鹿にされ、部屋が水浸しになり、絶縁状態の父親の死を警察から知らされ、「どうすりゃいいんだ俺の人生!」と叫んだ直後稲妻に打たれる。そして、気がつくとそこは40年前、1973年の浅草だった……。
そこで青年は若き日の父親と母親に出会う。

余韻を残す白眉のラストショット!
センスの良さを感じさせる

タイムスリップしたところで、「あ~またか」。と正直観る気をなくしたのだが、よくある設定でも演出や役者の演技でこれほど面白く感動させられるのか、見本のような出来である。なんども目頭が熱くなった。

特に最初の青年の絶望ぶり。自分は才能があると思っているのに、上手く立ち回れないためにちっとも周りに認められない。本当は自分に問題があるのに、それが分からない。挙句全てうまくいかなくなって泣き叫ぶ。ああ。なんか若い頃の私のようではないか。身につまされるなあ。

そして、自分の知らなかった父親と母親の事情を知った時の青年の驚き、悔悟。
ラストの青年と父親との照れくさい和解……。

ラストショットも余韻を残し素晴らしい!
ちょっとないセンスの良さである。
さすが、異星人!(笑)。やはりプレアデス星人かしら?

「家族」に向き合っているだろうか?
それぞれの胸に問うテーマ

また、劇中でのマジックシーンは、主演の大泉洋がクランクインの4ヶ月前から、そして撮影に入ってからも特訓を続けただけあって、驚愕のマジックを見せてくれる

これらのシーンは、一体どのように撮影しているのかが分からないほどミラクルで、エンターテインメントしててワクワクさせられた。もっと観たかったほどだ。

父親とコンビを組んでの舞台も爆笑!
劇団ひとりのお笑いの経験が生きていて、ギャグのテンポが抜群だった。

さて、見所はたくさんあるが、やっぱり一番は「“家族”って」と問いかけられる部分だろう。
「家族に向き合う」「家族を見放さない」「理解しようとする」「話す」「許す」……どんな家族であっても、縁あって今生は家族なのだから、家族でいる間は努力したい。そんなことも出来ていないよ、日本人。
メッセージが、今だからこその劇団ひとりのメッセージが強く感じられた傑作である。

「青天の霹靂」
2014年5月24日(土)より全国東宝系で公開!
(C)○c2014「青天の霹靂」製作委員会
http://www.seiten-movie.com/

監督・脚本:劇団ひとり
出演:大泉洋 柴咲コウ 劇団ひとり 他
原作:劇団ひとり「青天の霹靂」(幻冬舎文庫)
脚本:橋部敦子
音楽:佐藤直紀
主題歌:Mr.Children「放たれる」(TOY’S FACTORY)
製作:「青天の霹靂」製作委員会(東宝、太田プロ、アミューズ、幻冬舎、GyaO!、電通、日版、KDDI)
製作プロダクション:東宝映画
3制作協力:ドラゴンフライ エンタテインメント
配給:東宝