桜の花は、「冬」があるから開花する

奄美大島でソメイヨシノは見られない?

桜(ソメイヨシノ)の開花といえば、一本の木まるごと、あるいは桜並木の全体が一斉に咲き誇る姿が、本当に壮麗で素晴らしいですよね。
家の近くや出かける先々で見事な桜を目にすると、「あぁ、春が訪れたな」という、毎年のことながらも鮮やかな感慨に満たされます。

以前、3月下旬に鹿児島県の奄美大島へ旅行に行ったことがあります。
東京を出発する前に「いまこちらが開花の少し前だから、向こうはちょうど満開では」と思って調べてみたら……、あれれっ? 奄美大島の開花予想が出ていない……。
開花予想を発表している気象協会の説明をよく見てみると、予想の対象は「沖縄・奄美地方を除く全国」ということになっています。
暖かい地方ほど植物の発育が良くて開花も早い、という単純な性質ではないんですね。亜熱帯性の奄美大島には、そもそもソメイヨシノは自生しておらず、桜といえば赤色の濃い「緋寒桜」という品種が一般的だそうです(しかも開花は1~2月という早さ)。

桜がキレイに開花するのは寒い冬を乗り越えたから

で、実際に奄美に行ってみたら、公園の片隅にソメイヨシノの木があるのを見つけました。
ところがその咲き方は、本州などで見るのとはずいぶん違っているのです。
葉っぱがすでに茂っている中に、ところどころにつぼみが出ていたり、開いた花もあったりと――、まるで「体内時計」が狂ってしまった状態の、やる気があるのかないのか分からないような咲き方でした。

ちなみに調べてみたら、さらに南の沖縄本島にも植樹されたソメイヨシノがあるそうです。
そちらは、つぼみも葉も付けることなく、細い枯れ木のような姿で、育たないまま長年ずっと眠った状態でいるという話です……。

つまり、ソメイヨシノが花開いて生長するためには、「冬」がどうしても必要なわけです。
凍えるような冬の時季、桜は葉を落として見るからに寒々しい裸木になりますが、そのとき幹の内に生気をたくわえながらじっと静かに待っているのでしょう。
そして春が訪れて気温がゆるむや、ため込んでいたパワーを一気に外へほとばしらせ、桜の樹全体が開花。花が散った後に葉を青々と茂らせ、盛夏のエネルギーを浴びながら、堂々たる桜の樹になっていくわけです。
――ところが寒い冬がないと、この「成長サイクル」へのスイッチが起動しないらしいのです。

うまくいかない時期も重要な期間

私たちの人生のプロセスの中にも、「冬」にあたる時期があるものです。
色んなものごとがうまくいかず滞ったり、不本意な方向へ傾いたり、気持ちの面でも満たされず、体調までもすぐれなかったりと……。
でも本当の自分が花開いていくためには、そのような時期を経ることが、ものすごく重要なことかもしれません。

この地上世界は、ネガティブな出来事や感情エネルギーを圧倒的なまでに経験できる世界です。この経験ができる場は、地球以外に存在しないという人もいます。
そうした地球だからこそ、まさしく一気に咲き誇るような、飛躍的な浄化やシフトも可能なのでしょう。