一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.34 『ワン チャンス』

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歌だけしかなかった、
冴えない男の大逆転成功物語

人生って面白いな、と思う。
すっかり諦めていた夢が、ひょんなきっかけで突然叶う。大逆転とでも言えるような出来事がたまにある。それは、たぶん、あまりないことなんだろうけど、そういう逆転劇を観せられることを私たちはとても好きだ。だって、もしかしたら、変わり映えしない生活をおくる自分にも・・・なんて思ってしまうし、またそこに人生のルールを見せられるからである。

携帯電話の販売員だったポール・ポッツが、オーディション番組で優勝して一夜にしてオペラ歌手になった!というニュースは2007年当時話題をさらったが、7年後の今年彼の物語が映画で追体験される。
ポールの幼い頃からの夢はオペラ歌手。デブで地味で気が弱くいつも苛められていた少年時代。夢も苛めも性格も大人になってからも変わらなかったが、初めて出来たガールフレンドとの出会いで背中を押され、タレント・コンテストに出場することに。そこで優勝を果たしたポールはヴェニスのオペラ学校へ留学するのだが……。

夢は初期設定があっていれば叶う
ただし、諦めなければ

だいたい幼い頃からの夢というのは叶うらしい。小学校の卒業文集とかに将来の夢を書かされるが、その通りになった人というのは決して少なくないようだ。それは初期設定が出来てるわけで、人というのはそれに沿って人生を歩んでいく。途中で大幅に夢を変える場合は初期設定を変えて自分に宣言し直さなければならない。でなければ、道に迷い、いつまでも夢は叶わない。
私も中学校の夢が教師で、高校の夢がコピーライターか編集者で、今講師と編集者後ライターをやっているので両方叶ったわけである。しかし、母親によると高校の時に占いで「この子教師になる」と言われていたそうだ。それを、講師をやりだしてから聞いて、人はちゃんと自分で決めた方へ行くものだな、と感動した覚えがある。

ポールもヴェニスへ留学してからその後病気や怪我で全て上手くいかず、夢を諦めようとするのだが、もう一度だけ有名なオーディション番組に出ようと決意する。
夢は諦めなければ、初期設定があっていればその通りに叶う。たとえ時間がかかっても。フジコ・ヘミングしかり、ね。

溜めて溜めての感動のラスト!
カタルシスに浸って!

ポール役のジェームズ・コーデンがとってもキュート!
着やせするのか、脱いだらかなりのおデブちゃんなのだが(まあ、見た目も太めではあるが、背があるので見苦しくは見えない)笑顔や、歩き方とか愛嬌があるし、動きがコミカルなんである。それにかなり綺麗なブルーの瞳。フォトジェニック!なのだ。彼が悲しんでいるとこちらも悲しくなるという、観客の共感を呼ぶ才能がある役者でもある。
また、彼を支える妻のセリフも忘れがたい。病院で意識不明の彼に「歌えなくなっても私が食べさせていくわ、私があなたを支えて幸せにする……」
妻の役割を分かっているセリフだ。
セリフで言うと、ポールが後に妻になるジュルズと初デートの時の会話も爆笑!
是非チェックして欲しい。

さて、クライマックス。
人は崇高なものを見せられた時、どうするのか?
ただ、涙を流すしかないのだな、と思い知らされる。
ポールの歌声にただただ涙腺決壊!
溜めて溜めての、すっごいカタルシスでした!!

 

「ワン チャンス」(原題 ONE CHANCE)
2014年3月21日(祝・金) TOHOシネマズ有楽町ほか全国ロードショー
http://onechance.gaga.ne.jp/

2013年/英
配給:ギャガ
104分