一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.33 『LIFE!』

妄想癖のある地味なサラリーマンが
初めて冒険の旅に出るヒューマン・ドラマ

人は誰しも今の生活を変えたい、今までと違う自分になりたい、と密かに思っている。
しかし、その願いはたいてい叶えられることはない。そう心の底では望みながら、日々生きていくのに精一杯だったり、めんどくさかったり、ほんとうは習慣を変えたくなかったりして、毎日をとりあえずやり過ごしている。でも、一番の理由は勇気がないから、だろう。
本作の主人公ウォルターもそういう人間だ。
「LIFE」誌の写真管理部に長年勤務。不器用で気弱な性格なため、いい歳になっても平社員で独身。社内の気になる女性に話し掛けることもできないままだ。でも、ウォルターはそんな退屈で単調な日々を大胆な妄想をすることでやり過ごしていた。たとえば、意中の女性がビル爆発で助けを求めていると、ウォルターはスーパーマンみたいに空を飛んで行って彼女を助けるとか、気に入らない上司をボコボコに殴るとか、すべて想像の世界のことだ。
しかし新しい経営者にリストラされそうになり、しかも最終号の表紙のネガが見当たらず、ウォルターは意を決してネガを送付したフリーのカメラマンを追ってグリーンランドへ向かうことに・・・・・!

Life2

ほんのちょっと勇気を出すことで
退屈な日常は姿を変える

私も良くやる。頭の中はいつもいろんな妄想でいっぱいだ。昼間電車に乗って窓の外を見ながら○△◇×と夜中に日記を書きながらアレコレと、映画を観ながら妄想してたりする。
そうすることで、息抜きしているのだ。それがなかったら人生はとても辛くなると思う。

さて、ウォルターは勇気を出して一歩踏み出すことで、グリーンランド、アイスランド、アフガニスタンと、とんでもない冒険の旅をすることになる。しかし、それはとてつもなく素晴らしい旅で、彼は「自分自身」を発見することになるのだ。そして、帰ってきた彼には嬉しいご褒美が・・・。
いつも頭の中で想像することで満足していた彼が、行動する。その行動は「そうだ、今からちょっとグリーンランドに行ってこよう」でいいのだ。ほんのちょっと勇気を出して、電話してみる、違う駅で降りてみる、声をかけてみる。それだけで世界は変わる。

Life3

「仕事なくなったらグリーンランド行けばいいんだ」
ものすごく元気と勇気をもらえる

この映画は、ものすごく勇気をもらえる。
「なんだ、会社リストラされてもとりあえずグリーンランド行ってみりゃいいんだ!」
と思える(笑)。
「仕事なくなったら、せいせいするよ。だってなんでもできるじゃん!」とも思えた。
「大丈夫なんだ。なにがあっても。そうだったんだ。とりあえず、生きてたらなんだって出来るんだから、大丈夫なんだ。ほんの少しの勇気があればいいんだったよ~。忘れてた」
なんである。
本作でうぉ~っ!と元気になる人は少なくないだろう。
なんて幸せな気分にしてくれる愛すべき映画か。

でも、その気持ちが一週間以上続くことは稀である。私たちはまた、単調極まりない、退屈な日々を過ごすことになる。それでも……本作を観てデヴィッド・ボウイのCDを買いに行ったあなたは少し皆と違うかもしれない……。ボウイの曲を聞くことで、背中を押されるからだ。

Life5

 

『LIFE!』
http://www.foxmovies.jp/life/


(c)2013 Twentieth Century Fox.
3月19日(水)よりTOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、
梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、
TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、
OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、
TOHOシネマズ西宮OSほか全国ロードショー