現代社会で生き延びるアウトサイダーたちの儚い夢『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

4年ぶりの新作は、ジャームッシュ監督が7年間温めていた
自らの集大成……吸血鬼のラヴ・ストーリー

永遠のアウトサイダーとして生きる孤高の映画作家、ジム・ジャームッシュ。米インディペンデント映画の最大の巨匠と呼ばれ、各界の熱いリスペクトを集めつつも、N.Y.を拠点にメインストリームからは常に距離を置き、マイペースで自分の作りたい映画だけを撮り続けてきました。そんな彼が、実に7年構想を温めていた4年ぶりとなる念願の新作が、吸血鬼の恋人同士を描く『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。すでにカンヌ国際映画祭に出品されて絶賛を博しています。

初期の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ダウン・バイ・ロー』で時代の寵児となった80年代から、ファッションやアートの分野にも多大な影響を与え、近作『ブロークン・フラワーズ』では円熟したオフ・ビートなユーモアセンスで新たなファンを魅了したジャームッシュ。大人気の短編連作シリーズ『コーヒー&シガレッツ』には、イギー・ポップ、トム・ウェイツ、ジャック・ホワイト、RZAからケイト・ブランシェットやビル・マーレイまで、様々なカルチャー・セレブたちが登場し、彼への深い信頼と交遊の幅広さを窺い知ることができます。

そして30年もの長いキャリアを通じ、ジャームッシュが一貫して描いてきたのが“放浪するアウトサイダー”の姿。特定の居場所を持たず、鋭利な牙を備え、人目を忍んで夜の世界のみに生きる吸血鬼とは、まさにそのメタファー。
彼個人の心情が濃厚に託されたこのモチーフからも、今作は集大成的な一本と言えるかもしれません。同時にここには、表現の世界においても、名声や富の欲望に溺れて本質を見失った現代へのアンチメッセージが込められています。

困難な21世紀を生きる
聡明で儚いアウトサイダーたち

映画の舞台は、自動車や音楽などアメリカが誇る重要な文化的歴史を持ちながら、現在は貧困率の上昇と人口の減少で荒廃が進む、ある種象徴的な都市デトロイト(2013年7月18日、財政破綻を声明。それ以前の夜の同地が映し出されている)。そして神秘的なモロッコのタンジール。困難な21世紀を生きる吸血鬼のラヴ・ストーリーです。
謎のカリスマ・ミュージシャンとして人知れず活動するアダムと、永遠の恋人イヴが再会し、二人の甘く退廃した日々が描かれています。
すでに何世紀にも渡って繰り返されてきた彼らの恋物語。だが現代世界が壊れゆく中、この聡明で儚いアウトサイダーたちは生き残り続けることができるのでしょうか?

キャストには新旧を代表する豪華な顔ぶれが集まった。イヴ役にはティルダ・スウィントン。かつてデレク・ジャーマン監督のミューズとして女優のキャリアをスタートした彼女は、『ムーンライズ・キングダム』など個性的な映画作家から『ナルニア国物語』シリーズほかハリウッド大作まで縦横無尽な活躍を見せています。

今回の企画に最大の理解を示し、ずっと映画化の実現まで待っていた立役者の一人でもある。アダム役にはトム・ヒドルストン。『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』の悪役ロキ役などで現在最も注目される英国若手俳優が、今作では新たな魅力を披露。さらに『アリス・イン・ワンダーランド』や『イノセント・ガーデン』などのヒロインで人気急上昇中の新進女優ミア・ワシコウスカ、『デッドマン』『リミッツ・オブ・コントロール』とジャームッシュ作品の常連でもあるベテランのジョン・ハートが脇を固めています。

吸血鬼の恋人たちが織り成すストーリー

米デトロイト。寂れたアパートでひっそりと暮らすアダム(トム・ヒドルストン)は、何世紀も生き続ける吸血鬼。その姿を隠し、アンダーグラウンド・シーンでカリスマ的な人気を誇る伝説のミュージシャンとして生きている。彼が起きて活動するのは夜間だけ。年代物のギターを愛好し、名前を発表せずに音楽を作る。必要な物の多くはイアンという男に調達を任せている。そして時折、自ら素顔を隠して医師ワトソンの病院を訪れ、極秘に血液を手にいれていた……。

そんな彼に、ある夜、懐かしい電話が掛かってきた。永遠の恋人、吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)からだ。モロッコのタンジールに滞在していた彼女は、やがてパリ経由で夜間の便を乗り継ぎ、“リュミエール航空”でデトロイトへ。アダムのアパートで二人は久々に再会を果たす……。

 

『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
2013年12 月20日(金)より
TOHO シネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ ほか 全国公開!

キャスト&スタッフ
アダム     トム・ヒドルストン
イヴ    ティルダ・スウィントン
エヴァ     ミア・ワシコウスカ
マーロウ      ジョン・ハート

スタッフ
監督     ジム・ジャームッシュ
脚本     ジム・ジャームッシュ
プロデューサー
ジェレミー・トーマス
レインハード・ブランディング

第66回カンヌ国際映画祭正式出品作品
第38回トロント国際映画祭正式出品作品

2013年/米・英・独/123分/カラー/英語/ビスタ/5.1ch/
英題:ONLY LOVERS LEFT ALIVE
/ 字幕:髙内朝子
提供:東宝、ロングライド
配給:ロングライド
宣伝:クラシック+PALETTE
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