「塞翁が馬」平成ヴァージョン~良いことが1回起こったら、次は悪いことが1回起こる。はもう古い!~

人生万事塞翁が馬

『塞翁が馬』って知ってる?

むかーし、中国に有名な占い師が居た。
その名を塞翁(さいおう)という。

あるトキ、塞翁が大事に育てていた馬のコクオウ号が逃げ出してしまった。

オーマイガッ!
この馬(コクオウ号)が居なければ、買い物にも行けなけりゃ、役所の仕事もできない。

これは、さぞ、落ち込んでることだろうと、ご近所のおばちゃんたちが、塞翁を慰めに行った。

おばちゃんA
「サイちゃん、元気だしなよ!コクオウが逃げたことなんか忘れちまいな!
そりゃあ、あの馬は、かなり便利だっただろう。
だから、ジャスコに買い物に行くのも、明日からは大変だろう。可哀そうに。
でも、忘れちゃいな!
そりゃあ、コクオウ号は、かなりの名馬と評判だったから、
あの馬を売れば、1億円くらい手に入っただろうから、可哀そうだね。
でも、忘れちゃいな!」

励ましてんだか、余計に落ち込ませたいんだか、よくわからないおばちゃんたちに、塞翁は言った。

「どうしてこの一件が、幸福に繋がっていないなどと言い切れるだろうか?」

おばちゃんB
「ガビーン!」

他人の不幸を笑いに来たおばちゃんたちは、不幸すぎる彼がただのヤセ我慢のために言ってるんだ、ああそうだ。と言って、帰っていた。
すると、どうでしょう!!!

次の日、逃げ出したコクオウ号は、そのモテモテのルックスのおかげで、逃げ出して居る間に、10頭のメスのサラブレッド馬を引き連れて、塞翁のところに帰って来たのだ。

サラブレッド1頭当たり、売れば3,000万円!
単純計算で、コクオウ号は3億円を塞翁に持ち帰ったのだ!

これを聞きつけたおばちゃんたちは、塞翁をお祝いをするために駆けつけた。

おばちゃんC
「サイちゃん!三億円手に入れたんだって?おめでとう!!凄いじゃないかい!!
いやぁ、私にも、おこぼれが欲しいもんだね~。
長男が最近フリーターになった、この私にもさぁ~。
いや、全然、気にしないで良いんだよ!とにかく、おめでとう!!」

お祝いしたいんだか、奪い取りたいんだか、よくわからないおばちゃんたちに、塞翁はこう言った。

「どうしてこの一件が、不幸に繋がっていないなどと言い切れるだろうか?」

おばちゃんD
「ガビーン!あいつ、この3億円の幸せを独り占めしたいから、予防線を張るために、あんなこと言ってんだわ!」

おばちゃんたちは、幸福すぎる塞翁は、ただのケチンボだ!そうだそうだ!と言いながら帰って行った。
すると、どうでしょう!!!

コクオウ号が連れて帰って来た、メス馬に乗って遊んでいた、塞翁の息子、チョウビンが、メス馬から落馬して、骨折してしまったのだ!

おばちゃんたちは、すぐに駆けつけた!!

おばちゃんE
「サーイちゃん!!チョウビン、骨折したんだって?ププッ。可哀そうに!!本当に、不幸だね~。いや、笑ってなんかいないよ!なんだい!本当に、不幸だね~、あぁ、かわいそうに。働き盛りの息子が、骨折して使い物にならない・・・。
これを可哀そうと言わずに、どうすればいいんだい、サイちゃん!だけど、元気だしなよ!」

終始、笑い顔のおばちゃんたちに、塞翁はこう言った。
「どうしてこの一件が、幸福に繋がっていないなどと言い切れるだろうか?」

おばちゃんF
「プププ。あいつ、また強がっちゃって。息子が、骨折したんだよ?不幸以外に未来は見えないよ。プププ。」

するとどうでしょうアゲイン!!

中国がレアアースの輸出制限を解除しないことに怒り狂った、ブッシュ・アメリカ大統領が、中国に宣戦布告!!

中国とアメリカが戦争になっちゃった!!!
中国の若者は、全員、兵隊に駆り出された!!
働き盛りの若者たちは、全員、戦争に連れて行かれたのだ!!

しかーし!塞翁の息子、チョウビンだけは戦争に行かずに済んだ。
なぜなら、骨折してたから!!

このトキ、このタイミングで、たまたま、骨折してたから!!
戦争に行った若者は、だいたい死んだ。

身体は超健康で、お家にいつも居た、あのフリーターの息子、おばちゃんCの息子も、死んでしまった。
息子の墓の前で、絶望に暮れ、号泣していたおばちゃんCの肩を叩いて、塞翁は、こう言った。

「どうしてこの一件が、幸福に繋がっていないなどと言い切れるだろうか?」

心から優しく微笑む塞翁の胸で、おばちゃんCはおいおい泣いた。
THE END
っていう、モノガタリが、塞翁が馬。

教科書あたりでは、「塞翁が馬」というコトワザの意味を、
不幸だからと言ってあきらめるな、幸せも来るさ、
幸せだからと言って気を抜くな、不幸も来るぞ!
と解説する。

しかーし!!

サイちゃんが本当に伝えたかったことは、そんなことじゃない。
仏教徒だったサイちゃんは、「縁起」の話しをしていたのです。
莫大な数の小さな小さな『縁』が幾重にも重なって、目の前の事象を、『起こして』いるに過ぎない!って。

馬が逃げたという縁を、その時点で「不幸」と決めたおばちゃんA。
しかし、もっとたくさんの馬を連れて帰って来た日にわかったことは、馬が逃げたという縁は、馬をたくさん連れてきてくれるための、ただの「縁」でしかなかったということ。
だから、塞翁は、こう言ったんです。

「どうしてこの一件が、幸福に繋がっていないなどと言い切れるだろうか?」

かっこいいよね、塞翁。
でも、むかーしの人ジャン、塞翁って。

凄い人に見えるかもしれないけど、しょせん、むかーしの人。

むかーし。
それは、「良いことが1回起こったら、次は悪いこと1回起こるよ」
という、とんでもない道徳観念が広く普及していた時代。

そして、トキは平成、世は平安!

わざわざ、幸福が起こったトキに、
「幸福が起こったから、次は不幸ね!」って意味わからん予約を宣言する必要無し!

不幸が起きたら、「これは幸せを引き起こす『縁』に違いない!」と言い、幸せが起きたら、「あぁ、これはもっと大きな幸せを引き起こすぞ!」って言えばいい。

塞翁がやったことを、半分だけやればいい!!
幸せばっかり、予言すればいい!!