「霊性=スピリチュアリティ」の本当の意味。代替療法翻訳家・上野圭一先生インタビューPART.2

西洋医学の発展で分離した医療と霊性のつながり

―ワイル博士のご著書でも、「霊性」という言葉が多数登場します。霊性とは何でしょうか。

上野先生:
霊性という「スピリチュアリティ」は、統合医療のなかで最も大事な柱の一つだと思うのですが、西洋医学には欠けていたこと。歴史的には、インドやチベット、中国、イスラムでも、医療と霊性は切り離せないものとして存在していたのですが、西洋医学だけが霊性を切り離しました。スピリチュアリティは神父や牧師、心の問題は心理学者に任せて、肉体の問題は医学が扱うというように縄張りを分けたのです。縄張りを分けて、目に見えるところだけを扱ったからこそ、西洋医学は急激に発達しました。ですが、医学が人間に応用されるときには、心や魂の問題に立ち戻るのです。iPS細胞などの再生医療もこれから発展していくと思いますが、臨床現場では、心の問題も魂の問題も分かる医師でないと本当はいけないわけです。それを当然のことにしようというのが、統合医療のムーブメントと言えるでしょう。

人間の五感がキャッチできる「リアリティ」はほんの一部

上野先生:
確かに日本では「霊性」という言葉も馴染みが薄いし、「スピリチュアリティ」と言ってもピンとこない人が多いと思います。目に見えない世界はあるのだけれども、我々の五感の範囲を超えているから、それに気づくことができないわけですよね。ですが、人間に与えられた五感でキャッチできるリアリティというのは、世界の全宇宙のなかでは非常に限られた狭い範囲。

たとえば電磁波の周波数のスペクトルにおいても、人間の視力が及ぶ範囲の波長というのは可視光線といわれる波長です。ですが宇宙には、紫外線、赤外線など可視光線以外の波長もありますよね。見えないから「ある」という実感が持てないだけで、昆虫や動物は、人間には感知できない領域が見えたり聞こえています。彼らは、人間のリアリティより広い所で生きています。

そのように考えると、目に見えたり、触れられなかったり、聞こえなかったりすることも、「ない」わけではなく、「ある」ということを認識する必要があります。その前提があって初めて、見えない世界が見える世界に影響を与えているという説明が可能になってくるわけですよね。


今ここに生かされている奇跡のような確率

上野先生:
霊性を別の角度から説明すると、我々は自分の力で生きているわけではないですよね。そもそもお父さんとお母さんがいて、我々が生まれるわけですが、生まれた時は言葉も知らない。しばらくしてこの世界に慣れて、言葉も一つひとつ覚えて人間として成長していく、そのプロセスのなかで自我が形成されます。自分がこの世に生まれて、今ここにあるという不思議。奇跡的な確率で「ここ」にいるのに、それが段々と忘れられて、当たり前になってしまうのです。そうやって自我が肥大すると、この身体は自分の所有物であるという錯覚が起こってしまうわけです。

~続く~

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【Profile】
上野圭一先生
ホリスティック医学協会副会長・翻訳家・鍼灸師。癒しと憩いのライブラリー館長。統合医療の第一人者アンドルー・ワイル博士のベストセラー『癒す心・治る力』を始め、さまざまな代替療法書籍の翻訳を手がける。
http://www.libraryhr.org/

<information>
上野先生が館長を務める「癒しと憩いのライブラリー」が、7/27(土)より伊東サザンクロスリゾート内でオープンします!
現在、蔵書寄贈を募集中。詳しくはコチラ

◆「癒しと憩いのライブラリー」 http://www.libraryhr.org/
場所:静岡県伊東市吉田1006 サザンクロスリゾート内

オープン日には、「癒しと憩いのフェス2013」を同時開催。上野先生の講演のほか、帯津良一先生の講演や、ヨガやヒプノセラピー、WATSU(ワッツ)などの体験型ワークもあります。

◆「癒しと憩いのフェス2013」
日程:7月27日(土)~28日(日)
http://iyashi-ikoi.org/

Photo: Mitsuyoshi Ryo