日本の食を訪ねて1~日本の田んぼを守る金寶自然酒蔵元「仁井田本家」PART.1

自然酒を造り続けて46年

福島県中央にある有機・自然栽培米の自然酒蔵元「仁井田本家」を訪ねてきました。緑豊かな阿武隈山麓にある蔵元「仁井田本家」は1711年(江戸中期)創業で約300年の歴史がある、日本で最初に自然酒を造った醸造元です。自然米だけを用いて金寶自然酒を醸造・販売したのが1967年で、自然酒を造り続けて今年で46年になるそうです。

仁井田本家の酒蔵周辺は、緑濃き山々の合間に田植えを終えたばかりの有機・自然栽培の田んぼが連なり、日本の昔ながらの里山の風景が広がっていました。まさに「有機の里」と呼ぶにふさわしい日本の田舎の美しい風景がそこにありました。

昔からお酒を化粧水代わりにしたり、酒粕を料理に使用したりと日本酒は日本人の生活に溶け込んでいました。そしてお酒は飲み方や選び方次第で良薬にもなる飲み物でもあります。金寶自然酒醸造蔵元仁井田本家では1711年創業以来「酒は健康に良い飲み物でなければならない」という信条を受け継いで自然酒を造り続けています。

自然酒造りに大切なのが原材料の自然米。仁井田本家の高橋専務が案内して下さったのが、自社田の有機圃場(田んぼ)と固定種稲の無肥料・自然栽培圃場でした。慣行農業の水田と明らかに違うのは、植物プランクトン、動物プランクトン、藻類、貝類、水生昆虫、昆虫、小動物、鳥類などが住みつき多様な生物が見られることです。

仁井田本家の自社田も同様で、専務自ら水田に手を入れ、藻をかき出して見せて下さいました。多様な生物が住む豊かな環境は病害虫の抑制になっており、これに合わせて清らかなで健全な水環境、微生物の多い腐葉土団粒構造の健全な土壌環境と調和のとれた生態系が有機農業には必要不可欠です。

仁井田本家では酒造りに欠かせない清らかな水を守るために、周辺の山々を守り豊かな生態系の復元を目指した「日本熊森協会」に加盟しています。また、田んぼの草取りは手取りと田車を使い、かぶとえび農法(かぶとえびが雑草を食べる)を取り入れ、蔵周辺の環境保全に力をいれています。福島県ということで放射能が心配な方も多いと思いますが、幸い田村町は阿武隈山脈が放射能を遮り、比較的線量の低い土地であります。

加えて同じ環境におかれても癌になる人とならない人がいるのは免疫力と自然治癒力の違いですが、植物に関しても同様で、調和のとれた健全な土壌・多様な生物環境・豊かで清らかな水環境、この3つが揃った有機農業の環境下では、植物も免疫力と自然治癒力を高めます。田村の有機・自然栽培米がお米自体の免疫力を高くし放射能の影響をほとんど受けていないのはこのためではないかと思います。

水源・田んぼ・周辺の自然環境を守り、健全な田んぼを増やしていくことが美味しい自然酒造りに繋がり、「穏 純米大吟醸」が今年5月全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。将来的には固定種・無農薬・無肥料の自然栽培田を増やしていく計画のようで、蔵元のある田村町すべての田畑で有機農業が行われる「有機の里計画」が蔵元の夢でもあります。

日本はお米離れが続いており、美しい里山の田園風景が失われつつあるように思います。日本の田んぼを守っていくことは日本の環境、生態系、風土、文化、食を守ることに繋がっていきます。有機・自然栽培圃場を見学させて頂き、「日本の田んぼを守る酒蔵」として全国の酒類及びお米生産関係の方々、また有機農業関係者に影響力のある酒蔵となっていくだろうと感じました。

~続く~
次項は酒蔵の訪問記事をご紹介します。

*仁井田本家では自然酒の他に、麹・有機米・自然水が原材料の植物性乳酸菌飲料マイグルトも販売しています。 マイグルトをご購入頂くとフクシママイグルト基金として売り上げの一部が復興支援に寄付されます。

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