「ひとりの女と、彼女を愛したふたりの男」
年上の男との包み込むような穏やかな愛の生活―――
年下の男との激しい愛欲―――
どちらも私を満たし、そして心を乱す
妻子ある年上の作家・慎吾と、長年一緒に暮らしている知子。
慎吾は妻のいる家と知子の家を週にきっちり半々、行ったり来たりしている。妻と別れて欲しいと考えたこともなく、 知子はこの平穏な生活に、自分が満足していると思っていた。 しかしある日、木下涼太が訪ねてきて、知子の生活は微妙に狂い始める。 涼太は昔、知子が結婚していた頃、どうしようもなく恋に落ち、夫と子供を捨て駆け落ちをした男だった。知子は慎吾との生活を続けながら、涼太と再び関係を持ってしまう。そして涼太の知子を求める情熱はやがて、知子が心の底に仕舞い込み、自分自身も気づいていなかった本当の気持ちを揺さぶり起こしていく。
強烈な個性を放つ俳優陣が独自の世界観を描き出す
本作は、瀬戸内寂聴のセンセーショナルな愛の物語を、『夏の終り』を熊切和嘉監督が映画化今最も輝く俳優、満島ひかりと綾野剛の競演で贈る話題作。
発売してから今までに100万部を超えるロング・ベスト・セラーとなっている『夏の終り』。瀬戸内寂聴が自身の体験をもとに書いたこの小説が、発売から50周年の節目の年に待望の映画化となった。監督は『鬼畜大宴会』で鮮烈なデビューを飾り、近年は『海炭市叙景』で高い評価を得た熊切和嘉。男女の三角関係を描いた大人のラブストーリーに初めて挑み、重厚で静寂な中に、溢れ出るような登場人物たちの情熱を見事に描き出している。
主人公・知子を演じるのは満島ひかり。
妻子ある不遇な作家との長年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされない、自身の女の業に苦悩する知子という難役を見事に演じ切った。
知子を愛し、優しく見守りながらも妻とも別れられない、寛容さとずるさを併せ持つ年上の男・慎吾を演じるのは小林薫。そして知子を求め嫉妬と孤独に苦しむ年下の男・涼太を演じるのは、今最も注目の俳優、綾野剛。
静かな色気と心に深い絶望を抱える慎吾と、どんなに虐げられても一途に相手を求める涼太、そしてふたりの間で揺れながら独自の愛を生きようとする知子というキャラクターたちを、実力派俳優陣が鮮烈にスクリーンに焼き付ける。
過去に駆け落ちをした男との再会
昭和30年代、年の瀬も迫ったある日、相澤知子は帰宅すると、一緒に暮らしている小杉慎吾から「木下くんが訪ねてきたよ」と告げられる。木下涼太は、知子が結婚していた12年前に出会い、駆け落ちをした相手だ。その恋はうまくいかずに別れてしまった。知子は、慎吾との8年間の穏やかな生活で、涼太のことなどすっかりと忘れていた。
大晦日の夜、知子は風邪をひいて寝込んでいた。熱心に看病していた慎吾だったが、「6日には来るよ」と言い残し出て行ってしまう。慎吾には妻がおり、週に半分ずつ、知子の家と自宅を行き来していた。作家である慎吾は、もう何年も書いていないが、知子は染色家として収入も安定しており、自立しているという自負があった。そんな生活に慣れきっていると思っていた知子だったが、なぜか今日は心細く寂しかった。年が明け体調も回復した頃、寂しさに引きずられ、涼太からかかってきた電話に、「会いにきて」と言ってしまう。その日から、慎吾との生活も続けながら、涼太とも関係を持つ日々が始まった……。
原作者の瀬戸内寂聴が自身の経験をもとに描き出した作品のなかのキャラクターは、生々しいほどにリアル。年上の男との穏やかな愛、そして年下の男との激しい愛欲……。二つの愛に満たされ、翻弄される知子の姿は観るものを作品の世界へと強く引き込む。
2013年8月31日(土)有楽町スバル座 ほか全国ロードショー
(C) 2012年映画「夏の終り」製作委員会出演:満島ひかり 綾野剛 / 小林薫 赤沼夢羅 安部聡子 小市慢太郎 監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
原作:「夏の終り」瀬戸内寂聴(新潮文庫刊)
音楽:ジム・オルーク 撮影:近藤龍人 照明:藤井勇 美術:安宅紀史
音響:菊池信之 衣装:宮本まさ江
配給:クロックワークス
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