一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.7 娘の生まれ変わりを信じる母親の悲しみと再生「桜、ふたたびの加奈子」

「生まれ変わり」の物語

この映画は「生まれ変わり」についてちゃんと分かって(原作・新津きよみ)描かれていると思った。その上で、ラストの謎解き(?)など、きちんとエンターテインメントに仕上げて感動させるところが巧妙だが、好感が持てた。私はラスト、ベティ・イーディの「死んで私が体験したこと」や森田健さんの著作を読んだ時の感動を思い出した。そして、深く胸が震えた。きっとこの映画を観て救われる人は少なくないのではないだろうか。

幼い一人娘を交通事故で亡くした母親は、自殺を図るが一命をとりとめる。それから彼女は娘の生まれ変わりを信じるようになり、偶然知り合った妊娠した少女の赤ん坊が娘の生まれ変わりだと思いだす。夫はそんな妻に戸惑うばかりだが、彼女は赤ん坊に夢中で……。

四十九日、一周忌、三回忌……と時間の経過を俯瞰のゆったりした同じ映像でチャプターのように現し、そこへ不協和音の不穏な音楽がかぶさる(まるで武満徹!)ので、観てるこちらはものすごく不安な気持ちになって、まるでサスペンスかホラー映画テイスト(笑)。なんだろう、この変な撮り方……と妙に画面に引き込まれる。全篇カメラは縦移動、横移動、俯瞰、足元だけ、など凝った動きを見せ、不思議な世界観を盛り上げる。監督は本作が長編二作目となる栗村実。アメリカで映画を学んだらしいが、面白い個性があると思う。

 

死んだ子供たちはずっと親のことを見守っている

さて、この映画は子供を失った母親の再生の物語であるが、幼くして死んだ子供の魂が、家族の次に生まれてくる子供に入ることはたまにあるそうだ。ふつうは何百年かしてからでないと魂は生まれ変われないらしいが、なにか特別な理由があるとすぐに生まれ変わると言う。
子供を亡くす逆縁というのはこの世で一番辛い事のひとつだと思う。しかし、死んだ子供たちはずっと親たちを見守っているし、たとえ短い間でも、この世に生まれてきた魂は喜びに溢れている。また、短い生で死んでいくことにはちゃんと意味がある。そして、死はかならずしも不幸なことではなく、終わりでもない、ということを知れば、今、悲しい思いでいる人は少しでも気持ちが晴れるのではないか思う。

そんなことを映画を観終わって考えたが、ほんとにちゃんと死生観や、死について教える、学ぶことは生きていく上で必要だな、と改めて思ってしまった。この映画を入口にして、スピリチュアルなことを身近に感じて、受け入れてくれる人が増えればとも思う。でも、一方で、スピリチュアルなことはやはり、声高に言ってはいけないことなのかも、とも思う。導かれて知る時がくれば、扉は開かれるのだから。

広末涼子の悲しみの演技が心に残る、スピリチュアルをすっと信じられる佳作である。

 

4月6日(土)~全国ロードショー
(C)2013「桜、ふたたびの加奈子」製作委員会
監督・脚本・編集/栗村実
原作/新津きよみ
出演/広末涼子、稲垣吾郎、福田麻由子、高田翔(ジャニーズJr.)、吉岡麻由子、田中里衣、江波杏子
http://sakura-kanako.jp/ 

 

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