古代中国医学の考え方「五臓六腑」とは その11~膀胱

尿の排泄・調整を行う膀胱

皆さん、こんにちは。美容鍼灸師の折橋梢恵です。最近やっと春の訪れを感じるようになってきました。春というと桜の開花ですが、東京では先日開花宣言が発表されました。今年は、例年より早い開花のようです

さて前回は、六腑のうちの「大腸」についてお話をしてきました。今回は、六腑の5つ目、膀胱の働きについてお話をしていきたいと思います。まず、現代医学での「膀胱」の働きについて見ていきたいと思います。「膀胱」の働きは、大きく分けると次の2つになります。

1つ目は、尿を一時的に溜めておく蓄尿の働きがあります。尿は腎臓で作られた後、尿管を通り、膀胱に送られます。膀胱は伸縮性のある袋状で一時的に尿を溜めることができます。膀胱には個人差がありますが、約450mlの尿を溜めておくことができます。

2つ目は、膀胱に溜まった尿を排泄する働きがあります。ある程度一定の尿量(約200~300ml位)が膀胱に溜まるとその情報は、末梢神経から大脳へ伝達され、大脳から排尿の指令が出されることによって、尿意が現れて排尿を促します。

東洋医学における膀胱は臓の腎と表裏の関係

では、東洋医学(中医学)での「膀胱」とは、一体どのような働きをするのでしょうか?その働きについて見ていきたいと思います。

中医学における「膀胱」の主な働きとしては、以下のような働きがあります。

①尿を溜める働きを持ちます。
②溜まった尿を排泄する働きを持ちます。

小腸や胃、大腸などと同様に「膀胱」の働きについては現代医学の膀胱の働きとほぼ同様といえます。
つまり、「膀胱」は尿の蓄積と排尿の働きを担っています。

中医学では、この膀胱の働きが低下することによって、尿がでにくくなったり、尿量が減少したり、また尿を溜めておく働きに異常が起こると頻尿や失禁などの症状が現れてきたりします。

また膀胱は、臓の腎と表裏関係にあり、互いに深い関係にあるといえます。尿を作るには、腎と膀胱の2つの臓腑が互いに助け合い、気化作用が上手く働くことが重要になります。※気化作用とは、腎にある気と膀胱にある気が互いに働き合って、様々な物質を作り出す働きのこと。

例えば、尿に異常が現れた時には、私たち鍼灸師は、その病の根源が腎にあるのか、または膀胱にあるのかしっかりと吟味した上で、治療対象になる臓腑を選択します。またどのような経緯で病に至ったか?など身体全体から得た情報を基にし、病の根源を探っていくことが中医学の大切な考え方といえます。

膀胱は身体にとっては州都

鍼灸の古い書物によると、「膀胱は州都の官」と記されています。州都は都会の場所を指し、様々なものが沢山集まることを意味します。つまり、私たちの身体の水液がこの膀胱に集まることを指しているのです。

また州都の官とは、古代中国の中央集権国家制度の中では、地方長官に該当します。それぞれの臓腑と水液を通じて連絡し合い、私たちの身体を調節していることを一つの集合体(国家)として例えているのかもしれませんね。

このように各々の臓腑を古代中国の政治機関の役職に例えることは、なかなか興味深い捉え方だと思います。皆さんもぜひこの機会に中医学に触れて頂き、興味を持って頂けると嬉しく思います。

では、次回は腑の最後、三焦についてお話をしていきたいと思います。

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