古代中国医学の考え方「五臓六腑」とは その9~胃

胃の大きな働きは、食べ物の消化と殺菌

皆さん、こんにちは。 美容鍼灸師の折橋梢恵です。今年も、もう3月に入り少しずつですが春の訪れを感じる今日この頃です。とはいえ、まだまだ寒い日もありますが、この寒暖の変化を繰り返し、徐々に暖かい春を迎えるのでしょうね。

さて前回は、六腑のうちの「小腸」についてお話をしてきました。 今回は、六腑の3つ目、胃の働きについてお話をしていきたいと思います。まず、現代医学での「胃」の働きについて見ていきたいと思います。「胃」の働きは、大きく分けると次の2つになります。

①胃液の殺菌作用です。胃液は、皆さんもご存知の通り、強い酸性を呈し、タンパク質の多くを変性させます。胃液は食べ物と一緒に体内へ入ってきた細菌やウイルスから身体を守っています。

②消化作用です。食道から送られてきた食べ物を蠕動運動(蠕形動物の移動運動などのように筋肉の収縮波を伴う、うごめくような運動)によって、こまかく粉砕し、分泌した胃液と混ざり合ってお粥のようなドロドロとした状態にして、十二指腸に送り出します。

東洋医学における「胃」は気血の流れも司る

では、東洋医学(中医学)での「胃」とは、一体どのような働きをするのでしょうか? その働きについて見ていきたいと思います。中医学における「胃」の主な働きとしては、以下のような働きがあります。

①飲食物をドロドロとしたお粥状にして、小腸に送る働きを持ちます。
②気血を送り出す源の役目を担います。

実は「胃」の働きについては現代医学の胃の働きとほぼ同様といえます。つまり、「小腸」と同様に食べた物の消化吸収を担うわけです。中医学では、この胃の働きが低下することによって、食欲不振や吐き気や嘔吐、胸焼け、膨満感、上腹部の痛み、しゃっくりなどが現れると考えられています。

また胃は、臓の脾と表裏関係にあり、互いに深い関係にあるといえます。このため胃の機能低下は、脾の働きにも影響を及ぼし、消化不良が長期に渡って続けば、全身のだるさなどの症状も現れてきます。

鍼灸の古い書物によると、「脾胃は倉廩の官」と記されています。
「倉廩」の「倉」とは、穀ぐらを指し、「廩」は米ぐらを指しています。つまり「倉廩」とは穀物や米などを納めておく蔵のことを意味しています。

このように脾胃は、食べた物を集める蔵の様な働きを担い、集めた飲食物を消化し、それらを気血に変化させ、全身に送り出す役目を果たしています。私たちの身体にとって食べた物を消化・吸収する働きとは、とても重要な役割です。

東洋医学において人体の様々な働きに関与する重要な要素として気や血という物質がありますが、これらを作るのは、実は「脾胃」の働きといわれています。このように脾胃は、私たちの身体を作り、機能させる上でとても重要な臓腑であるといえます。

消化吸収の要である胃の働き高めるツボ「足三里」

そこで今回は、消化吸収において重要となる胃に関係するツボをご紹介したいと思います。胃の働きを高めるツボとして、「足三里」という有名なツボがあります。この「足三里」というツボは、膝のお皿の外側の窪みから指4本分下にあるツボです。

食欲がない、胃がむかむかする、お腹が脹るなどの症状が現れているときにこの足三里のツボを押してみてください。またせんねん灸などのような家庭できるお灸も良いですね。

ツボ刺激やお灸はご家庭でも簡単にできる健康法です。ぜひ皆さんもご自身の健康法として試してみてください。では、次回は大腸についてお話をしていきたいと思います。

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