イ・ビョンホン主演『王になった男』 “もしあなたが王なら、何をするか―”

今回は、これまで韓国映画を見たことのなかった人にもお勧めしたい、イ・ビョンホン主演の重厚な感動作「王になった男」をご紹介します。

暴君の代役となった男が、荒れた世に向き合う

冒頭シーンから、その場の空気や香りまでもが伝わってくるような臨場感ある映像と魅力的な音楽に引き込まれ、朝鮮王朝15代の宮廷へ。視線は、外からは伺い知れない清冽な空気に満たされた朝の宮廷の中を進み、王と、王に恭しく仕える人々へ移りゆきます。

しかし宮中の清冽さとは対照的に、王の心は荒れるばかり。宮廷には権謀術数が渦巻き、いつ何時暗殺されるかもわからない日々身に迫る恐怖に、王は暴君へと変わり果てていました。そんな折、陰謀によって王が病床に伏したことをきっかけに、平民のハソンが代役に買われます。

王と瓜二つの外見をもつハソンは、王が不在の15日間、王の影武者になるという危険な仕事を引き受けます。そして、宮廷で行われている政治の実情を目にするうち、利権を貪り民に負担を強いる政治の在り方に疑問を持ち始め、人間としての良心から語り始めます。

王として威厳を放つ一方で、宮中の人々を和ませ、笑わせ、感動に涙させる―彼の自然な優しさとのびのびとした人間らしい振る舞いは、次々と周囲を人々を魅了し、感化していきます。しかし“王”の変貌ぶりを不審に思い、また快く思わない家臣たちもいました。

そして、病から回復した王は影武者の抹殺を命じます。ハソンが悩んだ末にした、「究極の選択」とは―。

 

 

 

真の王は誰か、真の王とは何か?

人間の強さ、愛と苦悩、真の高潔さと表裏一体の可能性と選択。主演のイ・ビョンホンは、対照的な二人の「王」それぞれの内面の変化を、見事に演じ分けています。「真の王」に目覚めたハソンと、ついに「真の者」に覚醒して見せる王の圧倒的なカリスマには、心が強く揺さぶられ、深い感動を覚えます。

そして物語の中に散りばめられた笑い、張り詰めた空気、美しく抒情的なシーン、魅了的な人物描写、念入りな時代考証を経て準備された美しくリアルな舞台背景が、数々の感動的な場面を支えて、この作品を素晴らしく見ごたえのある作品にしているのでしょう。韓国映画の実力を示したと言ってよいのではないでしょうか。また、本作に描かれている「真の王とは何か」というテーマは、時代や国を越えて共通の、理想のリーダーを希求する人々のニーズを反映して、ひとつの強いメッセージを放っているのでしょう。

 

 

2人の王たちのテーマは、本質への目覚めと自己の確立

最後に、スピリチュアリティの講師として、このレビューをもう少し「魂」寄りの視点で締めくくりたいと思います。この作品に登場する二人の王に共通したテーマは、「二つの自己の分離と葛藤を経て体験する、本質的自己への目覚め」と、「最も困難な状況下においても、真の自己でありつづけるという選択」。

まさに、霊的目覚めと成長のプロセスが描かれているのだとも言えるでしょう。

そして「王としての目覚め」と「自我の克服」とは、私たちの最も深いところにある本質的自我(霊的な自己=スピリット)が切望する真の価値であり、人間としての可能性の極致であり、霊的な旅の目的地のひとつであるのかもしれません。

私は、どっぷりと映画の世界を堪能し、観終わってからも感動の余韻がじんわりと残って、作品について誰かと話をしたくなりました。女性同士でも、恋人同士でも、ぜひどなたかと一緒にご覧になって、感想を大いに語りあってみてはいかがでしょうか。

ご鑑賞の際は、ハンカチをどうぞお忘れなく!

 

『王になった男』2月16日(土)新宿バルト9、丸の内ルーブルほか全国ロードショー
イ・ビョンホン主演最新作 1230万人観客動員、韓国映画史上TOP3の大ヒット!
2012年/韓国/131分/カラー/5.1chサラウンド/日本語字幕:根本理恵 原題:광해, 왕이 된 남자  監督:チュ・チャンミン (『マパド』『拝啓、愛しています』)   脚本: ファン・ジョユン(『オールド・ボーイ』)  キャスト:イ・ビョンホン/リュ・スンリョン/ハン・ヒョジュ/キム・イングォン/シム・ウンギョン
配給:CJ Entertainment Japan  製作:リアルライズピクチャーズ  
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