神仏絵師のよろづ話:第八話「恋愛は煩悩か? 愛染明王様が説く。」

みなさんは「恋愛禁止」と言うフレーズから何を想像されるでしょうか? だいたいは、某アイドルグループや、女子高、最近では、OLさん達の女子会グループの中でも口にされてるとか……。まあ、何かに集中して取り組まなくてはいけない時に使われますよね。

恋愛は煩悩?

この起源と考えられるのは、厳しい戒律の中で学ぶものとされていた、お坊さんや尼さんなど一般的に「聖職者」と呼ばれる職業を学ぶ際に始まったものと思われます。おそらくこれは、修行や勉強に「恋愛」は邪魔!という発想なのでしょう。ところで、みなさんは「煩悩」というのを聞いたことがありますか?「煩悩」とは、ひとことで言うと「人を悩ませる根源」であり、まさに進もうとする道を邪魔するものと言えます。さて、そう考えると「恋愛」は、煩悩とも言えますね。でも、果たしてそう言い切れるでしょうか? みなさんにも経験あるかと思いますが、恋愛は時にモチベーションを上げてくれるエネルギーにもなりますよね。もちろん相手のことが気になりすぎて学業や仕事に差し支えがある場合もありますから、どちらとも言えないのが本音ではないでしょうか? でも、マイナス面がある以上、禁止するほうが手っとりばやいのも事実ですね。

愛に生きて良い! それが愛染明王

しかしながら、人は何のために生きるのでしょう? そこに恋愛は不必要でしょうか? そこで登場するのがこの「愛染明王」様です。
愛染明王様は、煩悩や愛欲は人間の本能であり、これを禁ずることはできない。と説いています。

 

 

さてさて、愛染明王様のお墨付きをもらったので、多いに恋愛をしましょう!と言いたいところですが、ここで重要なポイントがあります。ひと言で「恋愛」と言っても実は、「恋」と「愛」は違うと言うのです。

「恋」は自分の内側 「愛」は外側の相手に向かうパワー

「恋」とは「恋しい」「恋い焦がれる」という言葉があるように、そのパワーは自分自身へと向かっています。つまり、内向きのパワーなのです。それに対して「愛」とは、相手へ向かっている外向きのパワーです。だからそのパワーは無限に生まれ、自らも活性化するのです。もう一度「恋」の話に戻りますが、そのパワーは内向きであるために、食欲や学習欲、集中力など他のパワーを蝕みます。まさにこの問題こそが「恋愛禁止」の原因と言えるのです! どうせなら、恋より愛を選びましょう! 「愛」とは、感じるもの。いくら貴方が愛してると言っても、相手が「愛されてる」と感じていなければ、それは「愛」ではありません。だから、「こんなに愛してるのわかってくれない」とか、「もっと愛して欲しい」などと言う言葉が出てくるのです。「愛」とは与えるもの。一方的でいいのです。だから、見返りも必要ないし、受けとめてもらえるか否かも問題ではないのです。

 

もうすぐバレンタインデーですね。もし、あなたが愛する人にチョコレートを渡そうとしているなら、精一杯の愛を届けてください。彼が、あなたの愛を感じるかどうか。まずは、そこからです。そして、あなたが彼から愛を感じたら……。これが愛染明王様が説く「愛」なのです。

次回の予定は「知恵と知識 普賢菩薩様と文殊菩薩様」です。
お知らせ
「第2回 神仏画展」開催予定!
7月11日(木)〜16日(火)
吉祥寺第一ホテル1F ギャラリーK
詳細は、こちら。
http://www1.parkcity.ne.jp/am/shinbutsugaten/2013/