『催眠療法士』が教える!「守破離」とは?~心の病と教育~

心の問題を考えるに当たって、避けて通れないのが教育です。家庭での教育もそうですし、会社での教育もそうですし、学校での教育もです。

心の問題、心の病は個人的問題と思われがちですが、それは大きな間違いで社会全体に蔓延している大きな問題であり、個人個人が勝手に病んで行っているわけではないのです。

僕のところにご相談に来るクライアントさんの大半も、最終的には自分自身の決断が未来への道標になるわけですが、そのプロセスで殆どの場合が集団から受けている違和感のようなものが出て来ます。正直、その違和感を社会全体が根本的に改善して行かない限り、心の病は無くならないと思っています。
さて。こんな追跡調査があります。とあるIQのテストを2~4歳の子供に行ったそうです。すると95%の子供たちが好奇心、探求心、抽象的思考に関して非常に高得点を出しました。子供たちのイメージングの力は本当に素晴らしいですね。この想像力こそ未来を創る種だと言っても過言ではありませんよね。

ところが、ここからが問題です。そんな彼らが7歳になった時、再び同じテストを行なったそうなのです。どんな結果になるかドキドキしますよね。しかし、なんと、同項目で高得点を出した子供はたったの5%しかいなかったそうなのです。とてもショッキングな結果です。これは日本の調査ではありませんが、日本同様の教育の過ちを犯し続けて来た結果だと思います。

これはあくまでも僕の想像の域に過ぎませんが、詰込み型教育と、右に倣えの教育の結果ではないかと思います。個性が大事だと言いつつ、没個性のインプット重視とパターン化された問題に対する解答を選択する教育。そして、教育者に絶対服従の教育。これらが、彼らのイメージングの力を奪ってしまったのだと思います。これは、誤解を恐れずに言えば洗脳に近いと思います。暗黙ルールの型に子供たちを当てはめた教育には警鐘を鳴らさなければなりません。

ところで、武道の世界には『守破離』(しゅはり)という言葉があります。僕はこの概念こそが、教育を変え、社会を変え、世の中の心の問題を軽減するヒントになると思っています。

先述した教育方針は、『守』です。これは、基礎固めの意味です。先生や上司、メンターの言う事をきちんと聞いて、しっかりと基礎基盤を固めることが何より大事だよ、ということです。人間的にも知識や教養的にも基礎固めはとても大切です。これなくして先には進めません。

しかし、ここで教育を終わりと思い込んでしまった人たちが多すぎるからこそ、言われたことしか出来ない人間や、何かしら考えはあるのだろうけれど自分の意見を言わない・言えない人間、ネットにこっそり、ここぞとばかりに不平不満を書く子供たちが増えてしまうのです。応用力や適応力が無いからです。そして、何か壁にぶち当たった時に、なんだかわからないモヤモヤした違和感に押しつぶされて心が壊れてしまうのです。

次に『破』です。ここからがこれからの時代の必須項目になってくると僕は考えます。『守』で「型」が出来たらそこで終わりではありません。人間は成長するために生きているのです。そしてより成長するために進化が必要なのです。その為には、いつまでも型通りでは通用しなくなってきます。そうです。「型破り」も重要なのです。これは決して反抗的という意味ではありません。改革、革新と思って頂ければと思います。わかりやすく言うなら「もっと良い方法は無いだろうか?」ということです。
現代人に足りないのは、ここだと思います。パターン通りの思考でうまくいかないと、「どうせ…」となってしまい、投げやりになってしまうのです。

教育者は『守』の後には『破』があるのだと言うことをしっかりと教える必要があります。これをきちんと教育することで、イメージの力、そして問題解決能力が実について行くのです。

最後に『離』です。要するに、一生弟子で良いのかということです。生涯勉強である事は代わりありませんが、基盤ができてオリジナルな部分が強化されて自信がついたら、今度は独り立ちしなければなりません。未来永劫誰かの言いなりになるための教育。そんな教育をしている学校や会社は人材が育ちません。むしろ病んで行きます。
一昔風に言うなら『のれん分け』と同じです。いつまでも弟子ではなく、必ずしも対等ではないかもしれないけれど、同じ屋号で独り立ちして行く制度です。そこから先は本来の自分の能力や責任が問われますが、無限に広がる世界も待っています。
このような『守破離』の概念を教育者がしっかりと理解し、自分の教え子たちに伝えて行く事が出来たら、夢のある、未来のある、心が病まなくて良い、逞しくて楽しい世界がやってくるのではないかと思います。