神仏絵師のよろづ話:第三話「お不動さまは、どうしてそんなに怖い顔?」

こんにちわ。神仏絵師の昌克です。観音様、明王様などの日本の神仏や、天使様を描いております。ここでは、私が絵を描きながら学んだり、感じたこと、神仏の姿に隠されたメッセージなどを書いてまいります。

第三話は、観音様と並んで人気の高い「お不動さま」のお話です。正式なお名前は「不動明王」。その大きな特徴は、憤怒相と呼ばれるその怒ったお顔でしょうね。そして、緑色の体。右手に降魔の剣、左手に羂索(けんさく:動物をつかまえる縄のようなも)。さらに細かく見てみると、右の下あごからの牙を上に出し、左の上あごからの牙を下に出すetc…なんと不動明王様には、十九の特徴があると伝えられています。だから、各地の不動明王像には、多くの共通部分を見つけることができるのです。きっと仏師や、仏画師には、かなりの束縛だったでしょうね。
その特徴の中には、こんなのがあります。「髪型は、弁髪(三つ編み風)。右目が天を向いて、左目が地を向く」はっきり言って、怖いと言うより、笑わそうとしているとしか思えません。
実は、私もそういう束縛の中、描き上げたのが、この不動明王です。私の描いた不動明王様は、若々しくエネルギッシュです。ヒーローみたいでしょ?(笑)

そもそも、なぜ不動明王様が、こんなに怒ったお顔をされているかというと、仏教の教えを広めることを邪魔する「仏敵」をやっつけるためなのです。
では、その「仏敵」とは、なんでしょう? 布教の邪魔をするもの? 他の宗教? 権力者?いえいえ違います。
仏の教えを、あえてひと言で言うと「慈愛」です。慈愛とは、他者を思いやる心。すると、その心の敵とは?

あなたの心の中にある「怖さ」なのです。

人は弱いものです。死ぬのが怖い。病気が怖い。それが保障されると、お腹がすくのも怖い。ひとりぼっちが怖い。恋愛が怖い。だから、自分を大事にする。他人よりも自分を大事にする。

でも、安心してください。不動明王様は、その「怖さ」を追い払ってくださいます。

すべての人が目の前の他人を大事にする。あなたも、目の前の他人を大事にする。
自分一人の力で自分を大事にするより、多くの人に大事にされるほうが安心でしょ?(笑)

そして、これが私の描いたもう1人の不動明王様です。

憤怒の顔でなく、優しい顔でもなく、あえていうと「厳しさ」と言えるでしょうか。
実を言うと、描いた順番は、先の不動明王様より、こちらが先です。そして、この不動明王様を描いてる時は、いろんな意味で厳しい時期でした。このお顔を完成させるのに、ひと月以上、かかりました。実際に描いた時間は短いのですが、描ける状態にもっていくのに時間がかかったのです。
「世に出たい。画家として売れたい!」そんな自分だけの利益のことを考えている間は、描けないことに気付くまで、それだけの時間が必要だったのだと思っています。

 

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