日本も厳しい暑さが終わり、ようやく秋めいてきました。ブータンの今の季節は……というと、ヒマラヤの起伏が海抜7000メートルから数百メートルに及ぶ位置に国があるため、ブータンの季節は年中「多様」です。
亜寒帯から亜熱帯までが九州約1.1倍という国土の中に存在しているブータンは、多様な動植物、文化に富んでいます。人口は約70万人。そのうちの10万人が首都ティンプーに暮らしています。
ブータンを東西南北に横断するとわかるのですが、人々の顔立ちや建物の様子も、南にいけば「インド」に近くなり、北にいくと多くの「山岳民族」が昔ながらの生活を行っています。
地理といった面において、ブータンとインドの関係を語ることは避けられないと思います。ブータンはその地理的位置から国策として、中国チベットよりもインドと先に友好関係を結びました。これは欧米ではイギリス人が一番にブータンと国交関係を結んだということも大きく関係しています。大国に挟まれた小国ブータンが、自らを守るため、最初に手を結んだインドとの関係は、今でもブータンの一番重要な外交といえます。
事実、ブータンの首都に入ると、「インド」の病院や施設がたくさんあり、インド兵が立っていたりします。内戦状態でもなく、世界の民主的な国家で、首都にこんなにも堂々と他国の軍隊が展開しているのは、なかなか見ることはないかと思います。またブータンの軍隊はインド軍と演習や訓練を常時行っています。ブータン人が英語教育に熱心なのはインドの影響があるといっても言い過ぎではなく、むしろインドの影響はこの面でも大きいといえるでしょう。
今、日本では原発が大きな政治的、国家的争点となっていますが、過去にインドとパキスタンの核問題が起こり、インドが核実験を成功させた際に、「わが友好国インド万歳!」と、新聞の一面を飾ったことは、「ブータンの少なくとも学識者の間では、騒然となった」ということです。地理的な要素が非常に大きな複雑な問題となりうることもあるのです。
さて、多様な自然といった面では、「世界の絶滅危惧種の動物がブータンに逃げてきている」と表現されるほど、多様な動植物が存在するのは事実です。
実際ブータンの森を歩くと、図鑑でしか見たことのない色鮮やかな鳥や、野生の鹿、イノシシ、馬、さるといった動物たちが、森の中を悠々と駆け回っています。
以前、農作物を荒らす動物の対策をしたいということで、ブータンの方に日本の技術を学んでもらおうと、来日していただいたのですが、「イノシシがやってくるといっても50~100ぐらいの単位なので、次元が違う」とのことで、なかなか対策が進んでいません。
せっかく耕した農地は一晩で荒地となってしまいます。しかし、捕獲するようなことは、「いずれ何らかの自然を変化させてしまうことになる」ということで、今のところは行っていません。動物と人間との共生のルールは、「私たちより何十年、何百年も前から動物たちが暮らしていたのだから」というブータン人の言葉によく表れていると思います。
植物といえば、多くの写真家をブータンの花々は魅了しています。Lotus&Herbsで取り扱っているアロマオイルは亜熱帯の地域、ブータンの東側で収穫されています。整備された畑で栽培されたものではなく、野生種を取り扱っているのですが、驚くほどの数の草木、花々が野生の状態で咲いています。こんなお花までもが野生で!?というものも非常に多く見ることができます。そう、以前お伝えしたように、まつたけなんて、本当にそこらじゅうにあるんです!
一日にブータンを東から西に横断すると非常に多くの動物、植物と出会うことができます。
「ブータンと日本はどちらがしあわせだと思う?」とよく聞かれることがあります。
私がブータンで学んだことの一つは、「しあわせと喜びは違う」ということです。「喜び」といった面では、日本の方が感じられることが多いなあと思います。何かを得た喜び、食べ物を食べた喜び・・・などなど。しかし「喜び」というものは「自己」のうちにとどまることが多く、しあわせとは異なります。しあわせの方が「自己」から飛び出て「他」に、また「他」からやってきて「自己」に波及するものではないかなと、私は感じています。ブータンの大自然を目の当たりにし、そこに人間からのみの生ではなく、共生を感じるとき、私は「ブータンの方がしあわせなのかも」と答えます。
日本もブータン同様、自然の恵みに富んだ国です。「経済発展し、技術力があり、勤勉で、礼儀正しい優しい日本人はブータン人の憧れ、尊敬を抱く民族。日本人こそが世界一しあわせな国を作れるよ!」と多くのブータン人はいいます。日本の国がこれからどういう舵を切るか、そしてまた、ブータンがどういう国になっていくのか、とても楽しみです。
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