自然界のすべてに通じる古代中国思想「五行論」PART.3

皆さん、こんにちは。美容鍼灸師の折橋梢恵です。
先日は、五行論の木、火、土、金、水の5つの要素のなかから、「木」に焦点を当ててお話をしてきました。今回は、その要素のうちの「火」についてご紹介していきたいと思います。

「火」とは、自然界に存在する炎の特徴を表わしているといえます。
この「火」の意味する性質を中医学では、「炎上(えんじょう)」という言葉で表し、火の熱さや激しさ、上に燃え上がる様子を現しています。
この火の性質には、さらに「暖かいもの」、「上昇するもの」、「明るいもの」「灼熱」などの特徴や作用を持っているものをすべて「火」の分類に属するものとして考えています。

それでは前回同様に、五行分類のなかから、この「火」の性質に該当するものをご紹介したいと思います。
五行分類で「火」に該当するものは、季節(五季)では夏、方位(五方)では南、色(五色)では赤、味(五味)では苦が当てはめられています。
五季のうち「夏」の季節というのは、太陽が地上に激しく降り注ぎ、なおかつ季節のなかではもっとも気温が上昇し、暑さが厳しくなる時期といえます。このことから夏は、火の性質に分類されているのです。また五色では「赤」があてはめられます。夏の暑さを色で表すと、まさしく太陽の色、そして炎の色、「赤」が当てはめられるのです。
また人体をつくっている器官や組織では、臓器(五臓)の心、五感(五官または五根)の舌、人体に存在する液体(五液)では汗が当てはめられています。鍼灸の施術においては、心の状態が舌に現れると考え、病気の診断に用いることもあります。

このように五行論の考えは、自然界のあらゆるものから私たちの身体や身近なものすべてにおいて用いることができる考え方だといえます。

最後に食生活に対するお話をしたいと思います。
五行論で、「火」に該当する五味は「苦味」とお伝えしました。薬膳で苦味は、身体の上にこもった熱を取り除く働きがあると考えられています。そのためのぼせやイライラなどがあるときには、苦味のある食べ物を取るとよいといわれています。

例えば、夏の野菜である苦瓜(ゴーヤー)は沖縄では欠かせない食材の一つです。ゴーヤーを豚肉と一緒に炒めるゴーヤーチャンプルは、ゴーヤーで身体の熱を取り除き、豚肉の疲労回復効果が期待できる、まさに暑い夏を乗り切るための料理だといえます。

このように中医学の考え方は、生活のなかで自然と実践されていることがたくさんあるのです。
皆さん、少しずつ五行論(五行説)の考え方について、理解して頂けたでしょうか?
さまざまなものを五つに分ける考え方を基に、皆さんも身近なものを五つに分類してみても面白いかもしれませんね。

次回は、五行論(五行説)の五つの要素のうち、「土」についてお話をしたいと思います。

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