幸福の国のブータン便り・第四稿「え」~「縁」編

「縁」という言葉は、ブータンにおいても日常的に使われます。
私が2010年に観光客としてはじめてブータンへ旅に出て、学校を経営する政府関係者と知り合い、いまこうしてブータンにかかわらせていただいているのも、「ご縁」です。
ブータンでは、一期一会を、ものすごく深いご縁に変化させていく、そんな力が溢れているように感じることがあります。
人口約70万人、九州の1.1倍ほどの国土を持つブータン。もちろん7000メートル級の山脈をもつ、ヒマラヤの山々を思うと、その国土はとてつもなく広大ですがど、首都でもたった10万人が暮らしている国。
そんな少ない人口やブータン人の信条を考慮した時に、一期一会が「人生」に連綿とつながるご縁に当たり前のように変化するのも、わかるような気がします。なんといっても小さな社会、知らない人でも、自分を知っているんだもの(笑)

小さな国で、新しく出会う人が少ない分、みんながみんなとつながっている分、ひとつひとつの縁を、また違った意味で大切にするのかもしれません。また、みんながみんなを知っているということが、犯罪を抑制してたり……ということもあるそうです。もちろんブータンには刑務所や裁判所はあるものの、犯罪そのものは非常に少ない、世界でもっとも安全な国の一つです。

人間関係が以前よりも希薄になったといわれている日本において、このブータン的「ご縁」というのは社会の諸問題や物事の見方を良き方向に変化させるには、ひとつのヒントとなるものかもしれません。
国王様の言葉をお借りすれば、「私たちはみなブータンというひとつの国に生まれた家族です」という考え方は、日々のひとつひとつの出来事や出会い、連綿とした生命のつながりすべてに縁を感じ、それをしっかりと結んでいくためのもの。「絆」という言葉が去年の日本の言葉になりましたが、私たちひとりひとりの手に持つ「糸」の「半」分を、誰かとしっかり結ぶということは、ブータン人であろうが、日本人であろうが、とても大切なことのように思います。
そんな風に縁を日々大切にするブータンはどこか懐かしいようで、進歩的であるような気がします。


毎日軒先でミシンをカタカタ……ブータンの元気なおじいちゃん77歳! ブータンではかなり長生きです


民族衣装に使用する草木染の糸です。とっても鮮やか

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