幸福の国のブータン便り・第六稿「か」~「学校」編

日本はもうすぐ梅雨明け。ブータンの首都ティンプーは6月頃からさわやかな気候になっています。毎年、夏になると、「あ~、そろそろこの暑さから逃れて、ブータンのさわやかな夏を過ごしに行きたいな~」と思います。

さて、ブータン幸せ便り第6稿、ついに「か」行に突入です。
「か」(が)といえば、やっぱりブータンのユニークなシステムが溢れる「学校」について。
ブータンの国王様が来日されてから、ブータンに関する情報、書籍、新聞記事を見かけることが以前よりもぐっと多くなりました。そしてブータンはその教育システムについて、語られることも多々。

まずブータンの学校教育で特筆すべきは、子供たち(5歳から可能)が小学校に入学する前の一年間、仮に学校に通い英語を学びます。これはブータンの宗教と国語以外の授業がすべて英語で行われてるので、その授業についていくための準備です。ブータンには幼稚園はありません。ですから、みんな近くの学校に通い、英語を一年間学びます。

英語で授業を行うという教育により、「ブータンって国際的なんだね」という言葉をよく耳にします。英語教育の普及は、少数民族国家のブータンが国際社会でその地位を確保するためということがもっとも大きな理由です。しかし、この英語教育は、もともとブータンの国語であるゾンガ語に、たとえば「科学」といった言葉が存在せず(使用する必要がなかったため)、国際的な言葉である英語の単語を代用したということも大きな理由のひとつです。ですから、ブータン人と話していると、ゾンガ語に紛れ、頻繁にソンガ語にない単語が「英語」で聞かれます。それでどんな話をしているのか、わかったりします。

ブータン人がゾンガ語を話している会話に耳を傾けてみてください。英語の単語がちらほら聞こえます。「テキストブック」、「サイエンス」、「ドレス」、「マシーン」……非常にたくさんの単語を英語で代用します。しかもこれらの単語はすべて自然に直結するものでなく、人間が生み出したものということも、非常に興味深く、ブータン人がどんな歴史を歩んできたのか、その次元の違いに思いをはせることも……。

ブータンの小学校就学率は72%。 ブータンの公立学校(高校まで)は無償ですが、制服や文房具などは自己負担。現金収入の少ない(ほとんどない、あるいはない)寒村地域や、学校が遠くにしかないといったような状態で暮らしている子供たちにとってはまだまだ学校に通えるチャンスは少ないのです。

ブータンでいう「遠くにある」というのは、電車もないブータンにとっては「山を徒歩で3日かけて超える」ということなので、とても「通学」なんてできないような環境です。学校に通っている子供たちでさえ、「片道1時間かかるよ」というのはざらです。

また遠隔地に暮らす子供たちは必然的に寮生活になるので、これまた経済的な問題に直面してしまいます。 首都との格差も教育といった面では大きく、首都の現金収入のある子供たちは車で送り迎え、素敵な給食、プールなどの設備がある……といった私立が人気で、首都と村々との格差は雲泥のものです。 ブータンには、「えっ?ここブータンなの?」と思うような私立学校が近年建てられ始めました。学校の先生もこれまでのように、英語ができて、お給料の安いインドの先生ではなく、「韓国出身です」というようなこともあります。

また学校で教えていると、高校などでは生徒の中に明らかに年齢が私に近い生徒がいたりします。家庭の事情で学校に通えなかった子供たちが大人になってから就学をスタートすることも、多いです。でもなんだかみんなとってもほのぼのして、楽しそう。そう、学ぶのに年齢は全く関係ありません。

大学の数はまだまだ非常に限りがあるため、多くの子供たちが近隣のインド、タイなどへ留学し、学位を取得します。
インドとブータンの物価の差は8倍といわれています。ブータン人は英語が堪能なこともあり、またインドの方が大変物価が安いため、インドはブータン人に人気の留学先です。
医学部はこれまでに存在せず、そろそろブータン初の医学部が整う様子です。

子供たちの笑顔が非常にまぶしいブータン。ブータンに訪問する機会がありましたら、学校訪問はとても素敵な思い出になる経験だと思います。


七夕の飾りつけ。子供たちはいつも一生懸命


お習字も体験しました


職員室へ、先生につくった笹飾りをプレゼントです 

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