霊能者・占い…ブームの真実の姿 『運命が見える女たち』

占いやスピリチュアルブームがますます盛り上がるなかもしも「運命が見える」占い師と出会ったら……?
動かせない「運命」と創造できる「未来」があると知った時あなたはこの二つに、いかにして向き合いますか?

不安に襲われた時、進むべき道を見失った時、「もしもこの先が見える人がいるならば頼りたい。これからどんな運命が待っているのかを、教えて欲しい」。そう思ったことがある人は少なくはないだろう。そして、見える彼らの能力に比例して、見えない人たちのある種の依存は強くなる。ワクワクも不安もごちゃ混ぜの自分の未来を、今この瞬間見せてくれるのは、きっと詳細な宝の地図を手に入れたような安堵感。「宝はここにありますよ。このまままっすぐ進みなさい」。こう言われたらきっと小躍りするぐらい嬉しいしワクワクする。でも、「宝は確かにここにありますが、この宝に到着するまでに、あなたはこの落とし穴に落ちてしまいますね」……こんな未来であっても知らないよりはマシだと思う人もいる。多くの人にとって、「未来」は見えない。だからこそ、起こるべき不幸すらも、知れば少しは安心できるのかもしれない。

著者は、出版社の社長であり編集長。友人の編集者・サワダさんから依頼されたことをきっかけに、占いの潜入取材を開始。本書は、5年に渡る潜入取材の様子をまとめ、2006年に発売した『夜にそびえる不安の塔』を文庫化したノンフィクション。発売から6年経過しながらも、全く古い内容とは思わない。むしろ占いやスピリチュアルは、2006年よりも今の方が社会に浸透し、読者の理解値も高いかもしれない。

最初は占いへの興味がなかった著者が、「ララさん」、「魔法使いさん」、「万葉さん」という3人の優れた占い師の力を体感するごとに、精神的にどんどん依存していく様が手に取るように分かる。彼女の人生や会社のこと、そして物語の大きなカギとなるサワダさんのこと。3人の占い師が伝えるように、事態は展開していく。彼女の人生と、それと同時期に起こったサワダさんの失踪と明らかになる彼の秘密。何故、サワダさんは彼女に潜入取材を依頼したのか? その衝撃の真実に鳥肌が立った。

未来は望むように創造できる。でもそれと並行して横たわる、動かし難い「運命」のようなものも確かにあるのかもしれない、そう実感。

最初は潜入取材として始まった著者と占い師たちとの関係が、気付けば著者にとって仕事の垣根を越え、彼女の人生に深く影響を及ぼすようになっていたことも興味深い。そして彼女が最後に導き出した答えとは……? 本書は占いとのベストな関係性も教えてくれる。

『運命が見える女たち』
井形慶子著
ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/
680円(税込)
2012年6月5日発売