カリフォルニアイヤシロチ vol.3

金星人に教わった若返りのドーム「インテグランド」

かがやく海と緑の大地、カリフォルニア。人々はその豊かな自然に魅了され、そこに自分たちの思いを重ねて、さまざまな“イヤシロチ”をつくってきました。そんな癒しスポットをLA在住のライターがご案内。第3回は、宇宙人から伝授された技術に基づき、ジョシュアツリーの砂漠に建てられた “若返りのドーム”を訪ねました。

■謎の死で未完に終わったSFプロジェクト

ロサンゼルスからフリーウェイ10号を東へ220キロ。ジョシュアツリー国立公園に近いランダーズという小さな町のはずれに、その不思議なドームは建っています。時を遡ること60年前。ジョージ・ヴァン・タッセルとその家族がこの地に移り住んだことから、「インテグラトロン」の物語は始まります。

ジョージはダグラス・エアクラフトに従事する航空機設計技術者でしたが、ネイティブ・アメリカンの聖なる巨石「ジャイアント・ロック」を中心としたこの地に縁を覚え、職を捨ててここに移り住み、小さな空港とレストランを開きます。

かねてよりUFOに関心を寄せていたジョージは、ジャイアント・ロックの下の洞穴で瞑想を行い、宇宙人との交信を試みます。そして1953年の夏、ついに彼は空飛ぶ円盤に乗った金星人“ソルゴンダ”と遭遇(!)。宇宙船の中に招かれ、ある技術を伝授されます。それは人体を若返らせるという革命的な技術でした。

翌年に彼は早速、 “若返りのドーム”の建設に取りかかります。彼が試みたのは、この建物内を強力な陰イオンで満たして“反重力”空間を作り出し、人間の生体細胞を若返らせようというもの。1930年代にジョルジュ・ラコブスキーが生体細胞を電気回路ととらえて考案した、治療器「マルチ・ウェーブ・オシレーター(MWO)」の原理を実現するものでもありました。

この一大プロジェクトのために、彼はUFO研究を目的とする非営利団体を設立し、ジョージ・アダムスキー、ジョージ・H・ウィリアムスンなど、著名なUFO研究家を招いた集会を開催します。1万人以上の人々がこの僻地に集まったといいますから、当時のUFOブームがうかがえます。ドームの建設費はその収益や寄付金でまかなわれましたが、なかでも大富豪ハワード・ヒューズは最大のスポンサーでした。

 

しかし、完成寸前の1978年、ジョージは謎の死を遂げました。残念なことに25年かけたプロジェクトは未完に終わり、若返りの実験は1度も行われませんでした」と話すのはインテグラトロンのオーナーの1人、ジョアン・カールさん。彼の死後、徐々に朽ちていく建物は土地管理局に保護された後、何人かのオーナーに継承され、2000年からはジョアンさんが姉妹とともにここを所有しています。

現在残っているのは建物だけですが、この建物自体にも素晴らしいパワーがあります。このドームの構造にはこの土地一帯の磁力を集め、増幅させる働きがあるのです。この建物を“エネルギーをチャージする巨大なバッテリー”、“磁場空間”と評価する科学者もいます。

7階建てのビルの高さ、世界最大級の巨石「ジャイアント・ロック」。ジョージはここで金星人に出会ったという

 

高圧電気を発生させ、反重力空間を作るという原理だった。この突起もそのシステムの一部

高さ12メートル、直径15メートルの建物。針は一切使っておらず、屋根部分も見事な組み木

 

■クリスタルボウルによる音のシャワーに癒されて

そして彼女が特に注目したのは、釘を一切使わず、材木を組んで作られたこの建物の音響効果でした。このドームは音波に深く共鳴するとジョアンさんは言います。彼女に勧められてフロアの中心に立ち、壁面に向かって声を出してみると即、その声は何倍もの大きさになって自分の耳に返ってきました。

「私はこれまで音のヒーリング効果を研究してきましたが、この建物には高い効果があることがわかりました。そして、人にイルカの声やさまざまな音を聞かせて脳波の変化を測定してみたところ、一番効果があったのがクリスタルボウルでした」。

インテグラトロンでは現在、ジョアンさんによるサウンドヒーリングのセッション、「サウンド・バス」が行われています。その心地良いことといったら! フロアに敷かれたマットレスに横たわり、クリスタルボウルの音色に聞き入っているうちに、あっという間に深い眠りの世界へ誘われてしまいます。クリスタルボウルを奏でるジョアンさんは途中で退場し、あとはヒーリングミュージックが静かに館内に流れるのですが、いつジョアンさんが姿を消したのか、自分がどれくらい寝ているのか、まったくわからないほどです。

心身ともにすっかりリラックスしてドームを後にし、北にしばらく車を走らせると、ジョージが金星人に出会ったという場所、「ジャイアント・ロック」に行き着きます。UFOを待っているうちに日も暮れて、砂漠ににょきにょき生えるジョシュアツリーが人影に見えてきました。19世紀半ば、コロラド川を越え、この地をさまよい歩いていたモルモン教徒移民たちは、この木に導かれて西へと開拓を続けたと言います。その人のような姿から、彼らはこの木を聖書の登場人物にちなんで“ジョシュア”と名づけました。もしかしたら、開拓民たちが出会ったのも木ではなく、金星人だったのかもしれません。

「若返りの技術が完成していたら、この世の中はどうなっていたのだろう」、「金星人は今も我々をどこかで見ているのかしら」。そんな思いをめぐらせながら、SF映画の舞台のような地を後にしました。

 

ドームの1階部分には、インテグラトロンとジョージの歴史を語る展示物が飾られている

 

「サウンド・パス」のセッション前後はテラスのソファーで寛いで。時を忘れてしましそう

 

インテグラントロンの庭の花壇に咲く可憐な花々。殺風景な砂漠の中にあると一層心が和む

 

この辺一帯に自生するジョシュアツリーはどこか妖しいシルエット。高さ12メートル、樹齢300年のものも

 

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