Trinity Pick Up in フィリピン荘厳な世界遺産 サン・アグスチン教会

フィリピン教会巡り第二弾。タールにある不思議なマリア像を見たあと、編集部はマニラに戻りサン・アグススチン教会へ向かった。この教会は1586年に建設がはじまり1606年に完成。フィリピンでは最も古い石でできた教会で1993年に世界遺産にも認定された。なかに入ると教会内に小さな美術館スペースがあり、等身大のマリア像、キリスト像、サント・ニーニョなど多くの神仏像や高価なロザリオなどを見ることができる。

サント・ニーニョとは「サント=聖人」「ニーニョ=小さな男の子」を意味し、幼きイエス・キリストを現す。大航海時代、スペインからやってきた冒険家マゼランがフィリピンへ渡る際に、スペインの女王がお守りとしてサント・ニーニョ人形を持たせた。マジョランがセブに到着した際、セブの王様と女王様にサント・ニーニョをプレゼントし、今もセブ島のサント・ニーニョ教会に安置されている。

美術館スペースは残念ながら撮影禁止。教会の神秘的な空気のなか、自分と変わらぬ大きさの神々を前にすると畏縮する。細部までよくできていて、いまにも動きそう。装飾品には金糸やビロードなど贅をつくした衣服を纏っている。四谷シモンの人形を彷彿させ、狭い部屋に沢山あってなんだか落ち着かない。ビビリながら美術スペースを後にし、大聖堂へ。「いよっ、世界遺産!」と声をかけたくなる、素晴らしい大聖堂。外から見た印象とは違い、バロック様式の豪華なつくりで、青みがかった教会内には独特のオーラが漂う。思わずその美しさに見とれ、しばし時間を忘れる。この教会には小さなチャペルが14もあり、過去7つの大きな地震や戦争を乗り越えた由緒ある場所だ。

祭壇の中央にはイエス・キリストが祭られ、その周りにはさまざまな神仏像があり、なかには首だけの天使の姿も。これはとても高級な霊体で、レベルが上がるほど姿はなくなっていくという。ちょっと怖いがピリピリとした威厳のある空気のなかで神聖な気持ちになる。霊感はないし、無宗教だけど、なんだか神様に見られている感じ。

神を怖れるというのはこういう気持ちなのだろうか?

余韻に浸りつつ、ホテルへ戻る。今回お世話になったのは5つ星ホテルのホテルフィリピンプラザ。プールやスポーツクラブ、スパなどが備わり、リゾート感覚の明るい雰囲気のホテルだ。

スタッフをよく見るとなぜか美男美女ぞろい。

不思議に思い、伺ってみるとフライトアテンダント並みに厳しい採用基準があるとか。聞いて納得。みんな優しく笑顔の素敵なスタッフばかり。

食事もバイキング形式で日本食はもちろん、中華、インド、フランス料理などあらゆる国の食事に対応している。編集部もフィリピンの地でお寿司と味噌汁をいただいた。余談だが、フィリピンはアジア唯一のカトリック教国。全体の約93%がクリスチャンだ。人々は純粋に神を信じ、教会内にあったお土産コーナーのロザリオにも“興味本位やおしゃれのために買わないで”と注意書きがあったほど。フィリピンでキリスト教が広まった訳は占領だ。この国は“占領される”歴史を繰り返している。それは過去、350年に渡りスペインに支配され、1898年に独立したものの1942年第二次大戦では日本の植民地に。日本軍の要塞があったためアメリカからの攻撃の対象にもなった。その後、敗戦した日本に変わり今度はアメリカに占領される。恥ずかしい話だが、私は日本がフィリピンを占領していたという事実をここに来てはじめて知った。話題の必修単位漏れ……ではなく授業でサラッと教わったぐらいでは記憶に残らず、実際に日本語が堪能なフィリピン人のお年寄りに会ってはじめて占領していた事実を痛感する。国を占領するにはまず「言葉と宗教」から侵略するという。生きた証人はどんな教科書よりも重みがあった。悲しいぐらいこの国には自国の文化というものがない。逆に言えば完全なミックスカルチャーで構成されている。さまざまな血が混ざり、フィリピンはたくましく生きている。世界遺産の後ろには高層ビルがニョキニョキと建ち並ぶ。来年はどうなっているのだろう? 物凄いスピードで発展を遂げるこの国へ、一度訪れてみてほしい。

 (撮影・生井弘美)

ホテルフィリピンプラザ

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