伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第15話~狼眷族と狐眷族。人間社会への影響。神仏との繋がり……

狼眷族の『グラウ』。狐眷族の『甚六』。狼語り……『グラウ』が経験してきた人間社会への影響や、神仏との繋がりとはどのようなものなのでしょうか?

 

その頃、狼眷族グラウも意識の中に湧き出る取り止めもない思考に翻弄されていた。

いつからか稲荷眷族の甚六と関わるようになってから、眷族狼でありながらも甚六たち眷族狐とも親しくなった。
グラウから見た眷族狐たちは、お茶目で思った事はポンポン言って、神様に素直に仕える存在だ。人間の願いの為に働くから、人間の欲に感化されたり、人間の都合で神様との繋がりを断たれたりすると、神様からはぐれやすい。
だからこそ、稲荷狐がはぐれ眷族になって悪霊化したモノと出会う度に哀れを禁じ得ない。

グラウの経験してきた限りではあるが、狼眷族は、人がいなくなりお社が放置されたりしてはぐれ眷族になっても、人間に復讐するなどして関わることは滅多に無い。
元の神社に帰れずに神様の光からはぐれた狼眷族は、自然発生的にはぐれ眷族で群れを作り、森や山の奥に住みつき、そこに人を寄せ付けなくする。
狼眷族は神仏との繋がりからはぐれても、森や山に住む自然霊に戻るだけなのだ。

 

人や町と関わらないから人間社会への影響はその程度だ。

開発を計画すると人が傷付かない程度な事故や異変が起きる山野には、狼に限らず、人間とは一線を画す龍や蛟などのはぐれ眷族が潜んでいて、人を寄せ付けないようにしている。
『工事を進めたいので安全祈願をする』などの人間次元の神頼みな解決方法が必要とされてはじめて、人間が勧請した寺社からのはぐれ眷族は『迷子状態』を解除される。
人間の不始末は人間によって片づける意思が必要なのだ。

昔を語る

 

大抵は道路公団や大手ゼネコンのエライ人が「この山に道路を整備しようとすると原因不明のトラブルで滞る」とかで地元の一宮や力のある祈祷寺に相談し、祈祷や祈願を頼まれた寺社の神仏の眷族経由で、それが三峯や御岳由来の狼眷族と知らされる事で、元居た寺社の眷族の龍や狼が神様から光の珠を預かって訪問し、その珠の光を浴びたはぐれ眷族がトリートメントされ神様のお使いに戻ることで、トラブルは解消し、工事が再開するか、自然や生態系を守った別ルートでの工事に切り替わる。
手前味噌な言い分だと笑われるだろうが、狼眷族の存在ははぐれてもやさぐれても、結果として人間の無謀な入植や開発による自然破壊を防いできた。

 

甚六の罵声の名言『田舎狼』はグラウにしてみれば「はぁい そうだよぉ~」である。

しかし人と関わり人に沿うことで神様の役に立つ狐眷族は、勿論動物の狐ではなく狐霊は皆そうだが、はぐれ眷族になったり悪霊化した場合、身を潜めるのは関わる人間社会の中なのだ。
土地や建物、人の心に憑いて人に復讐するか人の体を操り欲を満たす。
人の心を写し取るから人の復讐心や欲に染まる。