【トイレにはさまざまな神様が宿っている】
「トイレを清潔にしていると運気が向上する」、というのはスピリチュアルな世界では比較的ポピュラーな話ですが、そんな「トイレを守護する存在」というのをご存じでしょうか? 私たちの生活に必須ともいえるトイレだけに、そこを守るための存在ももちろんいるのです。
【炎で穢れを浄化する仏様】
多くの寺院に祀られている「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」は、「仏教におけるトイレの守護者」といえます。明王というのは、仏様の中でも「憤怒相」といわれる、怒った怖い顔をしている存在たちであり、多くのお寺で祀られている「不動明王」が有名です。それに比べると烏枢沙摩明王は、知名度は低いものの「五大明王」に入るなど、明王としての格は高い存在です。
それにもかかわらず、この仏様を本尊として祀っているお寺はほとんどありません。しかしながら、ほとんどの「お寺のトイレには、烏枢沙摩明王像があったり、お札などが祀られている」のです。場所によっては、お堂が存在していても、「あえて仏像をトイレに祀る」ところもあるのだそうです。
烏枢沙摩明王は元々は「アグニ」と呼ばれた、インドの「炎の神様」だったと言われています。基本的に不動明王をはじめとして、明王は炎と関わりが強いのですが、烏枢沙摩明王は、そんな明王の中でも、特に「炎で不浄を清める力」が強いと言われているのです。
水と炎というと、まさに正反対のイメージがあるかもしれませんが、だからこそ、「陰のエネルギーが集まりやすいトイレを浄化するために、特に浄化力が高い烏枢沙摩明王が祀られた」のかもしれません。
【糞尿から生まれた二柱の女神】
その一方で、現在の神道よりも古い「吉田神道」や「卜部神道」などでは、トイレの神様として「弥都波能売神(みづはのめのかみ)」と「埴山毘売命(はにやまひめのみこと)」を祀っていました。
弥都波能売神は水の神様であり、埴山毘売命は土の神様なのですが、どちらも女神であり、「伊邪那美命(いざなみのみこと)」が死ぬ直前に漏らした「糞尿から生まれた」とされています。
こちらは、仏教とは異なり浄化というよりも、その成立が伊邪那美命の糞尿というところから来ているのですが、水と土ということで、現在のような水洗トイレに変わる前の、くみ取り式トイレのことを考えると、比較的適した神様だといえるでしょう。
【中国のトイレの神様は幸運を授けてくれる】
ちなみに、中国のトイレの神様も女神です。「紫姑神」と呼ばれるこの神様は、トイレに祀られているのですが、日本のように浄化などを目的としておらず、「幸運を授けてくれたり、未来を教えてくれたりする」のだそうです。この神様は、素敵な御利益を授けてくれるのですが、トイレの神様になった由来は、なかなか可哀想なものです。
あるところに、美しい女性がいました。その美貌によって権力者の妾となり、寵愛を受けたのですが、「嫉妬に狂った本妻によってトイレで殺害されてしまった」のです。その結果、トイレに魂が棲みつき、そこで怪異を起こすようになったのです。その怪異をおさめる為、厠の神として祀るようになった結果、現在のように「御利益を授けてくれるようになった」のだそうです。
この説にはバリエーションがいくつかあるのですが、中にはもっとひどい拷問を受けてトイレに落とされて殺された女性が紫姑神になったというものもあります。
このように見てくると、仏教の烏枢沙摩明王以外は、ほとんどのトイレの神様は女神であるという共通点があります。日本では他にも「セッチンヨメゴ」といって、男女の紙人形をトイレに祀ったり、トイレを作る時に同じく「男女一対の紙人形を便壺の下に埋めて魔除けとした」という民間信仰もありますので、必ずしも女性だけではないのかもしれませんが、「女神とトイレに強い結びつきがある」ことは確かなようです。
なにか「穢れを祓いたいとき、邪念を祓いたいとき」などはトイレにこもって、そこの神様にお願いしてみるといいかもしれません。また、紫姑神はコックリさんのような「紫姑卜」という占いによって、未来を告げてくれたということですので、「インスピレーションを受け取る場所」としても活用出来るかもしれません。
色々な御利益のあるトイレ、しっかりと清潔にしておきましょう。
Goddess to protect the toilet.
God of toilet give purification and good luck.