■病気になるかならないかは、自分次第? 〜インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』Vol.35

病気が慢性化する最後の6段階に至るまでには、相当な長い年月を要し、何十年かかることもあるとされています。

病気のプロセス後半~症状に診断名が与えられる段階~

さて、これまで数回にわたり、病気の進行するプロセスの初期段階についてお伝えしてきましたが、今回はそのプロセスの後半、第4、5、6段階についてご紹介したいと思います。

 

●第四段階:「拡大」

さあ、ここからは、不調の原因となっている状況を遮断しない場合、本格的に特定の病気が勃発する段階です。アーユルヴェーダによれば、この段階になってはじめて、実際の病気がはじまるとされています。

今、増大したドーシャは、循環によって体の中を動き回り、過去の外傷や遺伝的性質、蓄積された感情ストレス、抑圧された感情、または他の要因によって弱まり、知らない間に損なわれていた器官や組織を見つけて、その中に入りこんで身を固めようとします。

体の弱い部分というのはちょうど、道路のくぼみのようにへこんだ場所といったら理解しやすいかもしれません。

体に現れる兆候は、そのドーシャが入りこんだ組織によってさまざまです。例えば、もしヴァータドーシャが増大した結果、骨組織の中へ入りこんだ場合は、関節の割れや関節がなるといった症状で現れるようになります。 このようにして、病気の「種」は発芽しはじめます。

この第四段階では、その入り込んだ組織の機能だけに影響が及び、そのまま放置しない限りは組織の構造自体はまだそのまま無傷といわれています。病気は表面化しませんが、注意深い人なら、微かな体の変化を感じ取れます。

季節の変化への対処法は?

 

●第五段階:「発現」

この段階は、実際の病気のサインや兆候が表面に現れ、肺、腎臓、肝臓、関節、心臓、脳、どこであろうが、欠点のある組織が明らかに
なりはじめ、西洋医学が病気を発見できる病気が十分に進行している段階です。そのドーシャのアンバランスへ、がん、気管支炎、関節炎、というように、名前が与えられます。

ここで、ドーシャは組織を実際に壊し始めます。
例えば、ヴァータが骨組織へ入り込んだ場合では、それは骨関節炎や骨減少症となるといわれています。
この段階では、病気の進行を翻すことはずっと難しくなり、ここでできることは、次の段階に発展しないようにとにかく十分な注意を払うことです。

 

●第六段階:「複雑化」

病気プロセスの最後の段階です。兆候は十分に明白になります。5段階では、一般的な診断になりますが、この6段階では、組織機能の高度な障害が発見され、身体経路への深刻なダメージが見られます。あるドーシャが酷く組織を破壊し、その組織の周りにも影響を与え始め、複雑化した段階です。

上の例を使えば、骨組織の中のヴァータは完全に関節を壊し、取替えが必要となるか、または本格的な骨粗鬆症となります。

あるいは、例えば悪化したピッタドーシャが、胃の壁を侵害し、潰瘍として現れる5段階が、この6段階に進行すると、ピッタが潰瘍に穴を開けて出血させたり、腫瘍を誘発することもあるかもしれません。

この段階は、完全に病気が悪化した状態で、従って最も処置が難しい段階といわれています。
一度この段階まで来てしまうと、状態を反転させることはとても難しく、体全体は今、病気に支配され、苦しみを与えられます。
この段階では、病気の進行を遅らせるための管理だけが日々の重要な日課となります。

アーユルヴェーダを伝えた古代インドの賢者

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さて。いかがでしたでしょうか。
良いニュースは、病気のプロセスは普通、たくさんの年月をかけて進行することです。

病気が慢性化する最後の6段階に至るまでには、相当な長い年月を要し、何十年かかることもあるとされています。

バランスの回復は明らかに、初期段階がずっと簡単です。

アーユルヴェーダでは、「とにかく予防すること」が強調されますが、これが、その理由です。

「賢明な人は、食事やライフスタイルを変えることによって、そして病気の原因となる病因をさけることによって再建できるということを理解します。その鍵は、気づきです。

あなたが、自分のマインド、体、感情が環境の変化にどう反応するかに注意深くなればなるほど、自分の気質への自覚、そして、一瞬一瞬ごとの選択に気づきを持てば持つほど、病気を生み出す可能性は低くなり、健康を維持することができるのです。」

と、著名なアーユルヴェーダ専門家のヴァサント・ラッド氏はいいます。

西洋医学がなしえない奇跡が、実際に報告されているアーユルヴェーダ。

次回からは、そんなアーユルヴェーダが提案する、具体的な病気予防のコツ(ライフスタイル、食事やハーブ、季節の変化への対処法など)について、少しずつご紹介していきたいと思います。

 

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