一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.9 『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』

デンマーク王室のスキャンダルを描く歴史絵巻

これ、実話だそうです。18世紀後半のデンマーク王室で起こったスキャンダル。そして政変。デンマークでは誰もが知る歴史的事実……。

何年か前にデンマークに行った際に歴史博物館で王室の年表と家系図を見たけど、デンマーク語だったのでさっぱり分からず、でも太陽王みたいな名前で呼ばれて人気の王がいた、というのは展示物の英語表示等で薄ぼんやり分かった。これが読めたら面白いのになあ~と思ったこともよく覚えている。だって、王室なんてところはスキャンダルの宝庫だから。

デンマークから帰って旅行記を書いたのでいろいろデンマークに関する本は読んだけど、このスキャンダルは知らなかった。今回興味深く観ることができたのは、歴史的な興味以外にも、ラブ・ストーリーとしても歴史絵巻としても、また、サスペンスとしても楽しめる佳作となっていたからだろう。

1766年、貴族が圧政を敷いていた時代に、英国から心を病んだデンマーク王に嫁いだカロリーネ。王は精神不安定から彼女に無礼な態度を繰り返し、二人の仲は冷え切るばかりだった。そんな時、外遊から帰った王の側につく新しい侍医ストルーエンセは、王の愛と信頼を勝ち得、次第に宮廷に変革を起こそうとする。彼の思想に惹かれたカロリーネは宮廷での淋しさもあり、ある夜、ついに結ばれるが……。

 

王と侍医とのラブ・ストーリー?

王妃と侍医との身分を超えた不倫物語。なんだけど、私にはこれは、王と侍医とのラブ・ストーリーに思えた。初めて自分を受け入れて認めてくれた男が次第に自分を繰り、相手をしてくれなくなる。でも、彼のことが好きだから、彼の言うとおりにしてしまう。王は無邪気な子供みたいに侍医のことを頼っていて、大好き。彼に抱きしめられて涙をこぼす。観ていて王妃と侍医との逢瀬よりハラハラするし、胸が締め付けられる。「邪魔なのは王妃なのでは?」と途中で真剣に思ってしまったほどだ(笑)。

その王を演じるミケル・ボー・フォルスガードは映画初出演にしてこの大役に抜擢され、見事ベルリン国際映画祭の主演男優賞を受賞。すごくチャーミングで魅力のある王だった。

一方侍医役のマッツ・ミケルセンはちょっと歳が行き過ぎかな。ゴツイ四角い顔に特徴的な唇でへの字口。もう少し前髪をハラリとさせるとか、後ろにくくった長い髪をバサッと下ろすとかすればセクシーさ全開になったのに、と悔やまれる。ここらあたりは男性監督の限界だな。

王妃カロリーネ役のアリシア・ヴィカンダー。「アンナ・カレーニナ」でキティ役を演じていたが、本作の方がずっと綺麗。スウェーデン出身で、本作ではデンマーク語を猛特訓して演じている。素晴らしい!

 

今生で私たちが学ぶ大命題は人間関係

さて、スピリチュアル的視点でこの映画が教えてくれることは、恨みを買えば、かならず後に復讐される、ということ。侍医は急進的な改革を進めたために、保守派の貴族たちに根深い恨みを残すことになる。それがラストの悲劇に繋がるのだが、恨みを買って、敵を作ることは社会でなんの得にもならない。人間関係では味方が多い方が何かあった時に助けてもらえる。だから、人に恨まれないように言葉を尽くし、心を尽くすことは大切なのだ。私たちが今生に生まれてきた大きな理由は、人間関係を学ぶ、という大命題があるのだから。

この映画のラスト、悲劇の歴史に溜息つきながらもじ~んと心地良かった。まさに、これが歴史ものを観る醍醐味!なのだ。

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』
東京/Bunkamura ル・シネマ  4月27日(土)~GWロードショー
大阪/テアトル梅田 4月27日(土)~
兵庫/シネ・リーブル神戸 5月4日(土)~
京都/京都シネマ 5月25日(土)~
監督・脚本/ニコライ・アーセル 脚本/ラスマス・ヘイスターバング 出演/マッツ・ミケルセン、アリシア・ヴィカンダー、ミケル・ボー・フォルスガード、トリーヌ・ディルホム、デヴィッド・デンシック
配給:アルバトロス・フィルム
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