『日本ふしぎ発見ーー地球と人類再生のために見直そう日本の不思議文化の旅』PART.4

第4回 猫の恩返し・猫また・化け猫
生まれ変わって戻ってくる猫

「猫の不思議。猫は魔性の生き物か?」

日本人は猫好きで、猫を飼う人は大勢いますね。猫が飼われるようになったのは室町時代くらいからです。やがて江戸時代には徐々に庶民にも広まり、明治時代初期には一般的になってきたようです。

猫は、目が光ったり瞳孔の大きさが変化したり、死期が近づくと姿を消すなど、とても神秘的な生物です。死んだ飼い猫と生まれ変わりのようにそっくりの別の猫がやってきて住みつくなどという少し怖い話もあります。猫は、その習性から不思議な生き物というイメージが強く、時には魔性の生き物と見られたりもします。なかには、魔性を通り越して妖怪に変化してしまうものもあると言われていました。

猫の妖怪は、かつては<猫また>と言い野生の猫が変化したものと言われました。あの有名な吉田兼好の『徒然草』や藤原定家の『名月記』にも<猫また>は登場しています。後世になり、猫を飼うことが普及するにつれ、<猫また>は飼い猫の変化(へんげ)である<化け猫>に変わります。あなたのおうちの猫君は、大丈夫でしょうか?

日本では、これまでに数回の<化け猫>ブームがありましたが、大きく分けて2回ありました。1回目はかなり長いスパンなのですが、江戸末期から明治初期にかけてです。

日本の化け猫ブーム

話芸では講談、演劇では歌舞伎を中心に一大<化け猫>ブームが起こりました。題材としては、「有馬の猫騒動」「鍋島の猫騒動」などの大名家のお家騒動にまつわる<化け猫>話が、多く創作されました。この<化け猫>ブームの引き金を引いたのは、第2回『本当は怖くない四谷怪談』にも登場した四世鶴屋南北でした。天才的な劇作家であった南北は、通称「岡崎の猫騒動」と言う化け猫劇を、たいした原話もなく作り上げました。この話は猫が化けるのではなく、<猫石>という猫の形をした石の妖精(妖怪)が大暴れする話で、実際の猫とは関係ありません。

しかし、この話を皮切りに、歌舞伎や講談で「有馬の猫騒動」や「鍋島の猫騒動」などが次々に登場します。「有馬の猫騒動」は無実の罪を追わされ非業の死を遂げた奥方の無念を、「鍋島の猫騒動」は家臣に家をのっとられた主家の子孫が殺された無念を、それぞれ飼い猫が晴らすというものです。また、徳島には「お松大権現」と言って、農民のため・正義のために命をかけた美女お松さんの愛猫がかたき討ちをするお話もあります。

2回目の≺化け猫>ブームは大正期~戦後まで、特に昭和10年代前半と昭和20年代後半~30年代前半にかけての<化け猫>映画ブームでした。映画の題材は、1回目のブームの映像化したものが多く、通算すると約80本くらい作られています。

諸外国の物語でもアメリカのポーの『黒猫』など有名ですが、猫の魔性を扱っているものの多さでは日本は際立っています。それは、日本人の猫好きに由来するのかもしれません。

昔は自然が豊かでしたから、自然の中で生活する動物が不思議な現象を起こすと思われていましたが、現代では自然は開発され動物も飼育という形で人間の管理下に置かれました。けれども、もしも動物に霊性や魔性があるとしたら、ごく普通に日々の生活している私たちのすぐ近くに彼らはいるのですから、良くも悪くも私たちになにがしかの影響を与えているのかもしれません。さて、あなたの家にいる猫は、幸いをもたらす天使のような猫でしょうか?それとも災厄をもたらす魔女のような猫でしょうか?

三浦正雄著『新・あの世はあった』