東北の魂を探る旅 「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」 PART.2

21_21 DESIGN SIGHTでは4月27日より、「テマヒマ展〈東北の食と住〉」を開催します。
本展は、東日本大震災を受け昨年7月に開催した特別企画「東北の底力、心と光。 『衣』、三宅一生。」に続き、三宅一生とともに21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める、グラフィックデザイナー 佐藤 卓とプロダクトデザイナー 深澤直人の視点から、東北の「食と住」に焦点を当てるものです。

今回の「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」開催に当たり、佐藤卓さんや深澤直人をはじめとした企画チームは、東北に実際に足を運びました。
そのなかで目にした光景、出会った人々やモノたちから感じた東北の魂は、私たち日本人の心を大きく突き動かすものでした。なぜ、東北には純粋な魂が今なお息づいているのか……。「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」でその答えを見つけることができるはずです。

▼テマヒマ展 〈東北の食と住〉
会期: 2012年4月27日(金)〜8月26日(日)
休館日:火曜日
時間:11:00〜20:00(入場は19:30まで)
入場料: 一般1,000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料
会場:21_21 DESIGN SIGHT (東京ミッドタウン・ガーデン内)
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6  Tel. 03-3475-2121
http://www.2121designsight.jp/

▼詳細は以下をご覧ください
東北の魂を探る旅 「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」 PART.1

 

「テマヒマ展〈東北の食と住〉」ディレクターの佐藤卓さんと深澤直人さんは、次のように語ります。

▼佐藤 卓(さとう たく)/グラフィックデザイナー


宮城県、石橋屋にて(駄菓子) Photo: Masako Nagano

「永い年月、厳しい自然と折りあいをつけながら、生活のために伝承されてきた東北に残る食と住から、私達はこれからのために、今、何を読みとることができるだろうか。伝承とは、先代のやっていることを最初は見よう見まねで身体で覚え、熟達したものが次の世代へと引き継がれていくこと。そこには、つくり方のマニュアルもなければ、丁寧な手ほどきもない。その家に生まれたら、それをすることが宿命だと身体に思い込ませ、受け継いでいく。
今、残っている素晴らしい手仕事を褒めたたえることは容易いが、どうしてこの地域に残ってきたのかを掘り下げ、そしてその精神をなんとか未来に残していく方法を探らなければならない時がきている。なぜなら、その永い間受け継がれてきた日本のものづくりの精神が、近代の『便利』を崇拝する合理主義に、歪んだ民主主義と資本主義が折り重なり、急速に消えつつあるからだ。
『便利』とは、身体を使わないということである。現代社会はできるだけ身体を使わないで済む『便利』なものを、疑うことなく受け入れてきてしまった。身体を使わないと人間はどうなるか。ここに記すまでもなく、様々な現代の病がそれを物語っている。この『便利』というウイルスは、一度生活に入り込むとなかなか元には戻れない手強いウイルスなのである。このウイルスが、日本の風土をことごとく蝕んでしまった。しかし、僅かな麹(こうじ)から幻の味噌を再生するように、今に残る手間ひまかけた手技からその精神を汲み取って、なんらかの方法で未来に向かって引き継いでいくことはできないものだろうか。この展覧会で、少しでも東北に残る日本のアノニマスなもの達に接していただき、日本のものづくりを今一度考えるきっかけにしていただければ幸いである」

プロフィール
株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などのパッケージデザイン、「ISSEYMIYAKE PLEATS PLEASE」のグラフィックデザイン、金沢21世紀美術館や国立科学博物館のシンボルマーク、武蔵野美術大学 美術館・図書館のロゴ、サイン及びファニチャーデザインを手掛ける。また、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」のアートディレクターや「デザインあ」総合指導を務めるなど多岐にわたって活動。著書に『デザインの解剖』シリーズ(美術出版社)、『クジラは潮を吹いていた。』(DNPアートコミュニケーションズ)。

 

▼深澤直人(ふかさわなおと)/プロダクトデザイナー


青森県、青森資材にて(りんご箱) Photo: Masako Nagano

「すだれのように吊り下げられた数千本の干し大根。天にも届きそうなくらいに積み重ねられたリンゴの木箱。やわらかく煮るために、ひとつひとつ木鎚でつぶされる大量の豆。すべては人間の手の動きと自然が織りなした東北の生活のテクスチャーであり、生活に刻まれたリズムである。自然と季節の力を借り、それも無駄のないひとつの道具として授かり、日々の恵みとして蓄え続けて行く様。この停まることのない緩やかな循環が東北の人の生きるペースである。
この生活には手間ひまがかかっている。しかし穏やかで強く、迷いがない。このペースは自然と共生して来た長い経験によって、エコロジカル(生態的)な営みに同期し、破綻がない。手間ひまをかけるものづくりは常に『準備』である。その営みに終わりはないし完成もない。しかしその手間ひまが生み出すリズムが、行く先を見失いかけている今の人間のペースを穏やかに緩和し、大切な何かを明示し、焦りの心にひとつの糧を与えてくれるような気がしてならない。
訪ねる東北の先々で必ず同じ質問をしてみた。『なぜもっと楽に、合理的な方法でやろうとしないんですか?』と。返事は、『??…?……。無理をしないってことかなぁ』と。『無理』は循環を壊してしまうことを意味している。粘り強く淡々と繰り返される一見単純そうに見える作業が、穏やかで豊かな生活の循環を生み出している。『テマヒマ展 〈東北の食と住〉』にその空気を持ち込めるだろうか。急ぎすぎて混迷する現代を救う啓示に満ちた生活の美を持ち込めるだろうか。東北には今、人が見失いかけている真の豊かさの定義と、飾らない美の真髄が潜んでいると確信している」

プロフィール
1989年渡米し、IDEO(サンフランシスコ)に8年間勤務。’97年帰国、IDEO東京支社を設立。2003年Naoto Fukasawa Design設立。イタリア、フランス、ドイツ、スイス、北欧、アジアを代表するブランドのデザイン、国内の大手メーカーのコンサルティングを多数手がける。デザインの領域は、腕時計や携帯電話などの小型情報機器からコンピュータとその関連機器、家電、生活雑貨用品、家具、インテリアなど幅広い。人間とものとを五感によって結びつける彼の仕事は、より大きな喜びを使い手に届けるものとして高く評価されている。著書『デザインの輪郭』(TOTO出版)、共著書『デザインの生態学』(東京書籍)、作品集『NAOTO FUKASAWA』(Phaidon)、『THE OUTLINE見えていない輪郭』(写真家 藤井 保氏との共著、アシェット婦人画報社)。

 

▼展覧会公式SNS
「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」公式Twitter、Facebookにて、展覧会最新情報を随時更新。
Twitter: https://twitter.com/#!/TEMAHIMA
Facebook: http://www.facebook.com/temahima

▼ 21_21 DOCUMENTS
21_21 DOCUMENTSでは、本展ディレクター 佐藤 卓と深澤直人が展覧会リサーチのために東北を訪れた際のフォトドキュメントを、計8回に渡って掲載。
以降も関連プログラムレポートなど最新情報を発信予定。
「佐藤 卓、東北へ」(全3回)、「深澤直人、東北へ」(全5回)

東北の風景 photo:Yusuke Nishibe