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ダライ・ラマ法王が語る、やさしい心とは? 第1回

『ダライ・ラマ法王東京講演 やさしい心―健康と幸せの鍵』

TRINITY21号にダライ・ラマ法王インタビューが掲載されていますが、法王は昨年11月に広島や東京などに滞在されました。東京で行われた両国国技館でのお説法をホームページで3回にわけてご紹介します。

『ダライ・ラマ法王東京講演 やさしい心―健康と幸せの鍵』と題された講演会。国技館に入ると様々な人種の方の熱気でムンムン! 室内ではダライ・ラマ法王関連書籍(ポスターもありました)の販売や、チベットからの亡命者を支援する団体の告知などがあり、“静かな説法会”というイメージを裏切る活気溢れる会場でした。ちなみに売り上げの一部はチベット亡命政府のダライ・ラマ法王及びチベット亡命政府の正式な代表機関であるダライ・ラマ法王日本代表部事務所(チベットハウス)を通して、チベット難民の支援に使われます。 

ダライ・ラマ法王の取材とあって、いらっしゃる方も取材に来る方もインターナショナル。プレス席では3ヶ国語ぐらい飛び交う会話を耳にし、サリーやチベットの民族衣装を着た方もたくさんいました。少し遅れて登場された法王は、取材カメラのフラッシュとスポットライトが眩しいようで、「そういうときのための帽子なんだ」と嬉しそうに説明してから袈裟と同色のサンバーザーを着用。会場から温かい笑いがおこり、いよいよお説法スタートです。<※一部割愛している部分があります。ご了承ください>

「本日はみなさま方にお話をする機会を得て、大変嬉しく思います。私は1967年に始めて日本を訪問し、とても近代的な教育国家という印象を受けました。同時に、日本は古代から伝えられている伝統というもの、とくに神道ですね。そういったもののなかで、自然や神に対する尊敬の念を持っておられる、という印象を受けました。これらのことは大変素晴らしいことだと思います。私たちは近代科学の発展のおかげで、他のものに対する尊敬の念を失いがちである、という危機に瀕しています。他を大事にする神道的な考え方が失われつつある。それは非常に悲しいことではないでしょうか。そういうことを忘れずに、現代的な科学の発展に基づく、物質的な発達と共に、伝統として伝えられてきた良き部分を合わせていくことが、これからの日本人に求められることではないかと考えています。

 最近の日本人のなかには内なる価値観に以前より関心を持っている人が多くなってきたと聞いています。さらに仏教の概念、教義、そして仏教というものについての関心がより高まっている、と聞き大変嬉しく思います。若い人々が精神的なものへ関心を示すことこそ、本当に重要なことではないでしょうか。
  一方で若い世代の人々の自殺が多くなっているということを聞いて、とても憂うべき状態で非常に悲しいことです。

ここにお集まりの方のなかには私にはなにか特別な力があると期待している方もいるかもしれません。が、そんな考え方はナンセンスです。私は単に同じ一人の人間として、お話をさせていただくためにここに参りました。私は皆様となにも変わらない、一人の人間なのです。「なにか良きことを成せる」という可能性を持っていることも、皆様方となにも変わらないのです。愛、優しさや、思いやりを自分の心のなかに持てる、そういった心を益々高められるという意味におきましても、皆様方とはなんの変わりもありません。その逆に嫉妬心、怒り、妬みなど悪い感情、破壊的な感情を持っているのも皆様方と変わりません。人間に共通する素晴らしい価値観を通して、お話したいと思います。チベット人、日本人でもなく、仏教徒でもなくただ人間として話しますので聞いてください。

昔の人々は精神性というものを大事にしていました。精神性というのは宗教的な意味も含めて、非常に重要視されていました。19世紀から20世紀全般になると、物質的な発展のみがすべての人々の注目を集める時代だと思います。その一方で人間性と発展ということがどこかで置き去りにされてきた時代になったのではないでしょうか。テクノロジーの発展がもたらしてくれる効果というのは、私たちの生活のなかでもすぐに感じられ、私達の生活のなかですぐに目の当たりにすることができたのです。しかし、宗教に関する信心、あるいは精神性といったものをもたらしてくれるものは私達人間にある種の希望を、光を与えてくれるものであっても、実際に目に見えるものではありません。私達人間というのは宗教的な精神性、あるいは信心というよりも、技術や物質の発展に依存するようになり、そちらの方が注目を浴びてきた時代だと思います。

つまり私たちは医学的に満たされた状態にあっても、精神的にはなにかが欠けているのではないか、ということがわかりはじめました。私達の肉体的な幸せももちろん、精神的な幸せも大きく関係しているからなんです。昔は精神性が重要視されていましたが、20世紀までの時代においては非常に豊かな生活を享受できるようになりました。それでも私達人間の心は「幸せとはなんなのか?」という共通した疑問点が湧き上がってきたと思います。私達にはお金もあり、権力もあり、すべての状況が整っている。それでも私達は幸せではない。それは一体なぜなのか? もし物質的なものが100%の幸せをもたらしてくれるなら、このような状態は起きてなかったはずです」。

法王は英語で話され通訳の方が和訳する間、会場にいるを人々をよ〜く見たり、手を振ったりとてもフランク! ご高名なのにとても人間的、そんな懐の深さを感じる説法会でした。

(2006年11月10日両国国技館にて・撮影/浦田ケイ子)

ダライ・ラマ法王東京講演写真1

ダライ・ラマ法王東京講演写真2

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